外科で活躍するDX|高精度手術の実現と医師の働き方改革

外科医療の進化は、デジタルトランスフォーメーション(DX)の影響を受けており、手術の高精度化と医師の働き方改革が同時に進行しています。最新の技術やデータ解析を駆使することで、外科手術はより安全で効率的なものとなり、患者に提供する医療行為の質の向上に寄与しています。また、DXの導入により、医師の負担軽減や業務の効率化を実現することで、外科医師数の増加も図っています。

本記事では、外科における現状の課題を解説し、その課題の解決に有効な医療DXを具体的な事例を交えながら紹介します。

伸び悩む外科医師数

近年、外科医師数は伸び悩んでおり、減少傾向にあります。

2018年に新専門医制度が開始されて以来、外科医師数はわずかながら増加していました。しかし、2022年の外科医師数は27,634人と2017年の27,820人より1,186人減少しました。その一方で、全体の医師数は、右肩上がりで増え続けています。

このことから、外科を選択する医師の数が減少していることが明確であり、今後、若手の外科医不足・外科医の高齢化が大きな問題となることが見込まれます。外科を選択する医師が減少している主な要因としては、長時間労働と短い生涯労働期間が存在します。

長時間労働

外科における最も大きな課題として挙げられるのが、外科医の勤務時間の長さです。

厚生労働省が2020年に公表した「医師の勤務形態について」によると、外科の週当たりの平均勤務時間は、61時間54分でした。この数値は全診療科の中で最も高く、全診療科の平均勤務時間である56時間22分と比べると、5時間32分も多いです。

こうした過酷な勤務体制は、身体的な疲労だけでなく、精神的ストレスも大きく引き起こします。特に、外科手術は高い集中力を維持する必要がある上に、長時間立ち続けることが多いため、疲労が蓄積しやすいです。長時間労働はワークライフバランスを崩し、家族や友人との時間を奪うため、医師の生活の質が低下します。このような状況は特に子育て中の医師にとって大きな問題であり、離職を考える要因となります。このように、長時間労働が常態化することで、新たな医師が外科の道を選ぶことに対する心理的な障壁が生じ、外科医師数の減少につながっています。

画像引用元:厚生労働省「医師の勤務形態について

短い生涯労働期間

長時間労働の激務により、外科医として長く働き続けるのは困難です。外科手術では、繊細で正確な手の動きと微細な変化を見逃さない視力が要求されます。しかし、そうした身体的要素は、年齢を重ねるごとに衰えていくため、外科医の多くが40~50代の間に手術の第一線から退くことを考えます。こうした外科医の生涯労働期間の短さを理由に、外科医を志すことを断念する人は多いです。

課題解決に効果的な医療DXとは

外科における課題の解決に効果的な取り組みが医療DXです。

医療DXの定義

厚生労働省によると、医療DXとは「保健・医療・介護の各段階(疾病の発症予防、受診、診察・治療・薬剤処方、診断書等の作成、診療報酬の請求、医療介護の連携によるケア、地域医療連携、研究開発など)において発生する情報やデータを、全体最適された基盤(クラウドなど)を通して、保健・医療や介護関係者の業務やシステム、データ保存の外部化・共通化・標準化を図り、国民自身の予防を促進し、より良質な医療やケアを受けられるように、社会や生活の形を変えること」と定義されています。

医療DXは、サービスの効率化や質の向上により、以下の5点の実現を目指しています。

  1. 国民の更なる健康増進
  2. 切れ目なくより質の高い医療等の効率的な提供
  3. 医療機関等の業務効率化
  4. システム人材等の有効活用
  5. 医療情報の二次利用の環境整備

これらの実現に向け、日本では「医療DXの推進に関する工程表」にもとづき、①全国医療情報プラットフォームの創設、②電子カルテ情報の標準化等、③診療報酬改定DXを3本の柱とし、取組を進めています。

医療DXの重要性

医療DXが重要とされる理由は、医療業界が直面している多くの課題に対処するためです。現在、高齢化社会の進展により医療ニーズが増加しており、効率的な医療サービスの提供が求められています。また、医療情報の増大と複雑化により、デジタル技術による効率的な管理が必要です。さらに、COVID-19パンデミックは遠隔医療やデジタル健康管理の重要性を浮き彫りにし、医療DXの必要性を加速させました。これにより、医療業界全体がデジタル化の波に乗ることが急務となっています。

医療業界では、診療の質のばらつき、情報共有の煩雑さや手作業による管理の非効率性が問題となっています。医療記録の管理や患者データの共有が不十分な場合、診断ミスや治療の遅延が発生することがあります。さらに、患者の待ち時間や医療機関の運営コストの課題も見られ、これらの問題を解決するには医療DXの導入が必要です。デジタル技術の導入によって、これらの課題に対処し、より公平で質の高い医療サービスを提供することが可能になります。

外科で医療DXを推進するメリット

外科における医療DXの推進は、課題解決だけでなく多くのメリットをもたらします。

手術の精度向上

最新の技術を活用することで、手術前の計画段階から、実施、術後の評価まで、全てのプロセスがデータに基づいて進行できます。例えば、3D画像解析やシミュレーション技術を使用することで、患者の解剖学的特性をより正確に把握し、個別化された手術計画を策定することが可能です。

また、ロボティック手術やナビゲーション技術の導入により、外科医はより精密な操作ができ、ミスを減少させることが期待されます。これにより、術後合併症のリスクも低下し、患者の回復が早まります。さらに、手術中にリアルタイムでデータを分析することで、外科医は迅速かつ的確な判断を下すことができ、手術の安全性が向上します。

また、医療DXは、データの集積と分析を通じて、手術の標準化やベストプラクティスの共有を促進し、全体としての医療の質を向上させる効果もあります。結果的に、患者の満足度が向上し、医療機関の評価も高めることが可能です。このように、医療DXは外科手術の精度向上に不可欠な要素となっています。

業務の自動管理

外科における医療DXの推進は、業務の削減においても大きなメリットを提供します。デジタル技術を導入することで、手術に関連する多くの事務作業や情報管理のプロセスが自動化され、外科医やスタッフの負担が軽減されます。

例えば、電子カルテや患者管理システム、予約システムの導入により、手術前の情報収集や患者のデータ管理が効率化され、手動での書類作成や確認作業が減少します。また、手術室のスケジュール管理や器具の在庫管理もデジタル化されることで、重複作業や無駄な時間が削減され、よりスムーズな業務運営が可能になります。業務の削減は、スタッフが本来の医療行為に集中できる環境を整えることにもつなげることが可能です。結果として、患者へのサービスが向上し、外科医自身の働き方も改善されます。このように、医療DXは外科の業務を効率化し、より良い医療環境を構築するための重要な手段となっています。

外科医の生涯労働期間の増加

外科における医療DXの推進は、外科医の生涯労働期間の増加に寄与する重要な要素です。医療DXにより導入されたロボット支援手術や手術ナビゲーションシステムなどのデジタル技術は、加齢による外科医の心身の衰えをサポートします。これにより、外科医は手術の精度や効率を向上させることができ、身体的な負担を軽減しつつ、高いパフォーマンスを維持できます。

また、シミュレーション技術やデータ解析ツールを活用することで、継続的な学びとスキルの向上も促進され、医師のキャリアの延長にもつながります。このように、医療DXは外科医の持続的な成長と医療の質向上に寄与しています。

外科における医療DXの推進事例

人工膝関節手術支援ロボット|豊川市民病院

参考:豊川市民病院 公式サイト

豊川市民病院では最新の人工膝関節手術支援ロボット「ROSA Knee(ロザ・ニー)システム」を三遠・南信地域で初めて導入しました。このロボットは、六軸多関節ロボットアームと光学カメラユニットを有しています。六軸多関節ロボットアームと光学カメラユニットに分かれており、患者の膝の位置を正確に把握し、人工膝関節を置換するための骨切り量を0.5mm単位、角度を0.5°単位で設定が可能です。

内視鏡AI(内視鏡画像診断支援システム)|胃と大腸の消化器内視鏡クリニック 博多南院

参考:胃と大腸の消化器内視鏡クリニック 博多南院 公式サイト

胃と大腸の消化器内視鏡クリニック 博多南院は、内視鏡AI(内視鏡画像診断支援システム)を活用した検査を行っています。この装置は、内視鏡検査時に病変が疑われる領域に対してリアルタイムに検出し、大腸がんや胃がん、食道がんの早期発見をサポートします。また、内視鏡システムと一体化した操作性が追求されているため、患者の負担を軽減しています。

術中ナビゲーションシステム|愛宕病院

画像引用元:愛宕病院 公式サイト

参考:愛宕病院 公式サイト

愛宕病院は、最新のナビゲーションシステム「NAV3i(ナブ3アイ)」を導入しました。このシステムの導入は、愛宕病院が日本国内においての初となります。世界トップクラスの高速コンピューターと正確度・精度を誇る最新のナビゲーションが搭載されており、困難な脳疾患・脊椎疾患の治療に大きく貢献しています。

ハイブリッド手術室|心臓病センター榊原病院

参考:心臓病センター 榊原医院 公式サイト

心臓病センター榊原病院では、本格的ハイブリッド手術システムが2室稼働しています。ハイブリッド手術室とは、手術台と心・血管X線撮影装置を組み合わせた手術室のことで、手術室と心臓カテーテル室、それぞれ別の場所に設置されていた機器を組み合わせることにより、高度な医療技術を提供します。

従来の手術室のX線透視・撮影システムではX線装置の出力、透視画像等が高度な術式に対応できない状況でした。心臓病センター榊原病院のハイブリッド手術室ではX線で撮影し、直ちに高画質な3次元画像を作成、観察しながら、その場で大動脈瘤治療、あるいは血管修復術の手術であるステントグラフトなどの先進的な手術を迅速かつ安全に実施することが可能です。

外科における医療DXにはRESERVA

画像引用元:RESERVA.md公式サイト

外科が医療DXを推進するにあたって、おすすめなのが予約システムの導入です。予約システムの機能は、来院や面会の予約管理にとどまらず、決済から顧客管理、手術室の部屋管理、患者管理をも自動化する機能を持つシステムです。複数のツールやプラットフォームを切り替える手間は一切不要で、これにより、医療機関の業務プロセスがより効率的に進められるだけでなく、来院者にとってもわかりやすく使いやすい環境が提供されます。

現在多数の予約システムがありますが、医療機関が効率的にDXを促進するためには、実際に導入事例もあるRESERVAをおすすめします。RESERVAは、28万社が導入、700以上の医療機関も導入したという実績がある国内No.1予約システムです。予約受付をはじめ、機能は100種類を超えており、医療機関の業務プロセスがより効率的に進められます。初期費用は無料で、サポート窓口の充実やヘルプの利便性が高いため、予約システムの初導入となる病院、クリニックにもおすすめです。

まとめ

本記事では、外科における現状の課題を解説し、その課題の解決に有効な医療DXを具体的な事例を交えながら紹介しました。医療DXを推進することで、高精度手術の実現と外科医師数の増加を図れます。

RESERVA.mdでは、今後も医療DXに関する知見や事例を取り上げていきます。

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