DX(デジタルトランスフォーメーション)は、医療分野のあらゆる側面において新たな変革をもたらしています。特にオンライン診療は、医療サービスのアクセス性を飛躍的に向上させる革新的な手段として注目されています。従来の対面診療に比べ、オンライン診療は患者にとっての移動の負担を軽減し、医療機関にとっても診療の効率を高める可能性を秘めています。
本記事では、オンライン診療について、導入するメリットと事前準備の手順を、具体的な事例を交えて解説します。
オンライン診療とは
オンライン診療の定義
オンライン診療はスマートフォンやタブレット、パソコンなどを使って、患者が自宅等にいながら医師の診察や薬の処方を受けられる診療です。
厚生労働省が公表した「オンライン診療の適切な実施に関する指針」では、オンライン診療の定義を「医師と患者間において、情報通信機器を通して、患者の診察及び診断を行い診断結果の伝達や処方等の診療行為を、リアルタイムにより行う行為」と定めています。
オンライン診療の現状
厚生労働省が公表した「新型コロナウイルス感染症の感染拡大を踏まえたオンライン診療の対応やその影響についての研究」におけるオンライン診療の診療科別の実施件数割合を見ると、内科が42%、小児科が31%、皮膚科が8%である一方、眼科及び外科はともに0.4%、リハビリテーション科は0.3%という状況であることが分かります。
また、オンライン診療に対する患者からの評価については、厚生労働省の「かかりつけ医機能等の外来医療に係る評価等に関する実施状況調査(その2)報告書(案)<概要>」の「患者調査(オンライン診療に関する意識調査)」において、オンライン診療を受けた患者の70%以上が、「診療の時間帯を自分の都合に合わせられた」、「待ち時間が減った」、「リラックスして受診でき、症状などを話しやすかった」という設問に「そう思う」と回答しました。
また、対面診療と比べて「十分な診察を受けられない」、「対面診療と比べて十分なコミュニケーションが取れない」という設問には「そう思わない」と回答している患者が80%以上存在しています。
さらに、オンライン受診経験ありの患者のうち、「新型コロナウイルスの問題とは関係なくオンライン診療を受けたい」と答えた患者の割合は42.9%を超えており、オンライン診療が患者にとって有用であることが分かります。
オンライン診療を導入するメリット
ここでは、オンライン診療を導入する具体的なメリットについて解説します。
患者の負担の軽減
オンライン診療は患者の負担を大幅に軽減します。まず、通院のための移動が不要になるため、交通費や移動時間を節約できます。特に、高齢者や慢性疾患を持つ患者にとって、移動の困難さや体力の消耗を軽減できる点が大きなメリットです。また、自宅で診療を受けることでリラックスした状態で医師と相談できるため、心理的なストレスも軽減されます。さらに、定期的なフォローアップをオンラインで実施することにより、頻繁な通院が不要になり、患者の生活の質が向上します。
このようにオンライン診療の導入により、患者はより快適で効率的に医療サービスを受けることができます。
医療資源の柔軟な活用
オンライン診療は医療資源の柔軟な活用を実現します。オンライン診療では、医師や専門家が地理的な制約を受けずに患者と接触できるため、特に地方や医療過疎地域における医療アクセスが改善されます。これにより、都市部の医療機関に集中していた診療の負担が軽減され、医療資源をより均等に分配することが可能です。
また、オンライン診療は診療所や病院の混雑を緩和し、急な対応が必要な患者への対応もスムーズに行えるため、全体的な診療体制の最適化も図れます。
感染症への感染リスクの軽減
オンラインで診療を実施することで、医療従事者と患者の接触を最小限に抑えることができるため、医療スタッフ自身の感染リスクも低減します。その上、感染症の疑いがある患者が直接医療機関に訪れることなく、初期段階での相談や症状の把握ができるため、迅速な隔離や対策も可能です。
オンライン診療における事前検討の手順
オンライン診療を実施する際には、入念な事前検討が必要です。厚生労働省の「オンライン診療の利用手順の手引書」ではオンライン診療の事前検討として以下の手順が示されています。
①医療機関における患者ニーズ・課題の把握
オンライン診療の導入を検討する医療機関において、患者のニーズや課題を明らかにして、それらがオンライン診療の導入によって解決できるかを考えます。
例えば、遠方に転居や単身赴任した場合でも、慣れ親しんだ医療機関を引き続き受診したいという要望があります。また、介護や子育て、仕事の影響で通院タイミングが制限される患者も多くいます。
これらのニーズに対して、オンライン診療は以下のような解決策を提供します。遠方に転居や単身赴任した患者は、移動の必要がなく、これまで通っていた医療機関での診療を継続できるため、医療の一貫性が保たれます。介護や子育て、仕事で通院が難しい患者に対しては、自宅からの診療を受け付けることにより、時間や場所に柔軟に対応でき、患者の負担を軽減することが可能です。
②オンライン診療の患者の対象範囲・患者数の検討
オンライン診療の患者の対象範囲および患者数を検討します。医療機関の規模や診療科目、地域特性などさまざまな観点を踏まえることが大切です。対象となる患者は、問診により状況把握が可能な患者や慢性疾患で基本的に体調に変化がなく、同じ薬を服用している患者などが考えられます。
これらの検討を通じて、オンライン診療が有効に機能する範囲を明確にし、実際の導入に向けた準備を整えることができます。
③実施可能時間の検討
オンライン診療の実施時間や予約可能時間を検討します。外来診察の時間内は予約のない外来患者も来院するため、予約時間の管理が困難です。そのため、平日の昼や夕方、土日など外来診察の時間外をオンライン診療の実施時間として設定している医療機関もあります。また、予約システムを導入することで、時間外の予約受付や、円滑な予約上の管理が可能となるため、オンライン診療を実施する際には導入を検討することをおすすめします。
④他の医療機関や地域での導入事例の確認
他の医療機関や地域での導入事例の確認や、オンライン診療システム事業者との打ち合わせ等を行い、既存のオンラインシステム診療の導入事例を確認することも大切です。これにより、システム導入にかかるコストや運用面での負荷についての情報を収集することができます。また、地域特性や施設の規模による導入の違いを把握することで、自施設に適したオンライン診療の形態を模索することが可能です。
全国の医療機関におけるオンライン診療の導入事例
ここでは、全国の医療機関におけるオンライン診療の導入事例を紹介します。
東京大学医学部附属病院
東京大学医学部附属病院では、厚生労働省が策定した「オンライン診療の適切な実施に関する指針」を遵守した上でオンライン診療を実施しています。患者がオンライン診療を受診する際は条件があるため、医師の判断のもと、対面診察時での事前予約が必要です。また、当院はオンライン診療システムを運営する会社と連携して、クラウドシステムおよび当院内のシステムと回線を責任範囲として情報セキュリティ対策を講じています。
東京医科歯科大学病院
東京医科歯科大学病院ではセカンドオピニオン外来を、ビデオ通話システム「ZOOM」を利用して、オンライン診療で実施しています。当院のセカンドオピニオンは、他の医療機関に通院している患者を対象に診断内容や治療法について意見や判断を提供し、今後の治療の参考にしてもらうことを目的としています。そのため、新たな検査や治療が必要なく、オンライン診療の有効活用につなげられています。
亀田総合病院
亀田総合病院は、コロナ禍での移動制限や、物理的距離の問題で受診をしまう患者へのサービス拡充を目指し、今までよりも充実したオンライン診療体制の構築に取り組んでいます。当院は南房総に位置しながら、経験豊富な医師や、希少疾患を扱える専門医が在籍していることから、全国より多くの患者が来院していました。一方で、受診したくても距離の問題ではじめの一歩が踏み出せないとの声も上がっていたため、オンライン診療の実施が推進されました。
参考:亀田総合病院 公式サイト
参考:亀田総合病院 公式サイト「亀田のオンライン」
山口県立総合医療センターへき地医療支援センター
山口県立総合医療センターへき地医療支援センターは、悪天候により医師が現地に赴けない場合において、オンライン診療の適切な実施に関する指針に基づき、オンライン診療を行っています。当院は、電話再診の場合、通話料・処方箋送付料として1,000円(税別)、オンライン診療(テレビ電話による診療)システム利用料・処方箋送付料として3,000円(税別)を別途請求しています。
参考:埼玉医科大学総合医療センター「内分泌尿病内科・再診患者様向け オンライン診療について」
参考:埼玉医科大学総合医療センター 公式サイト
徳島大学病院てんかんセンター
徳島大学病院てんかんセンターでは、てんかんの疑いがある患者や、てんかん患者に対して、紹介元医療機関の医師同席のもと、診断・治療をオンライン診療で実施しています。遠隔連携診療料は紹介元医療機関から患者へ請求して、後日当院から紹介元医療機関へ請求する仕組みとなっています。
オンライン診療の予約受付にはRESERVA
医療機関がオンライン診療を実施するにあたって、おすすめなのが予約システムの導入です。予約システムの機能は、来院や面会の予約管理にとどまらず、決済から顧客管理、さらにスタッフやリソースの調整に至るまで自動化する機能を持つシステムです。複数のツールやプラットフォームを切り替える手間は一切不要で、これにより、医療機関の業務プロセスがより効率的に進められるだけでなく、来院者にとってもわかりやすく使いやすい環境が提供されます。
現在多数の予約システムがありますが、医療機関が効率的にDXを促進するためには、実際に導入事例もあるRESERVAをおすすめします。RESERVAは、28万社が導入、700以上の医療機関も導入したという実績がある国内No.1予約システムです。予約受付をはじめ、機能は100種類を超えており、医療機関の業務プロセスがより効率的に進められます。初期費用は無料で、サポート窓口の充実やヘルプの利便性が高いため、予約システムの初導入となる病院、クリニックにもおすすめです。また、RESERVAのZOOM連携機能は、 オンライン診療の円滑な実施に大いに役立ちます。
まとめ
本記事では、オンライン診断について、導入するメリットと事前準備の手順を、具体的な事例を交えて解説しました。オンライン診療は、医療におけるDXの中でも、特に有用な手段として注目されています。
RESERVA.mdでは、今後も医療DXに関する知見や事例を取り上げていきます。