ドローンの種類は幅広く、空撮用、ホビー用、競技用、水中用、そして産業用など、さまざまな用途で使用されています。特に産業用ドローンは、さまざまな企業がすでに活用し始めており、実証実験も多数行われています。インプレス総合研究所によると、以下のグラフから、実際に国内のドローンビジネス市場は急速に拡大しており、2023年度の日本国内の市場規模は3854億円と推測されています。これは2020年の1841億円から2000億円以上増加しており、ドローンの社会的・経済的な重要性が高まっていることを示しています。
その中でも、物流・医療用など社会インフラに欠かせない産業において、過疎地域への物資輸送や災害時の情報収集など、多岐にわたるドローン活用の可能性が模索されています。しかし、対候性や航路の未整備といった課題も存在し、これらを克服するための研究開発や国による法整備が進められています。本記事では、ドローンの基本的な概要から、物流・医療分野における具体的なメリット、課題、そして企業のドローン活用事例までを詳しく解説します。
ドローンとは
ドローンとは、遠隔操作や自律制御によって飛行する無人航空機の総称です。ドローンは主にプロペラ、バッテリー、センサー、カメラなどの機器で構成されており、高度な飛行制御システムによって安定した飛行が可能です。ドローンは、物流、農業、建設、災害対応などの分野で革新的なツールとして注目されています。小型で機動性が高く、人が立ち入れない場所や危険な環境でもかんたんにアクセスできるため、従来の方法では難しかった作業を効率的に行うことができます。また、AIやIoTとの連携により、データ収集や分析も可能となり、ビジネスや社会に新たな価値を提供しています。
ドローンを活用するメリット
物流分野
過疎地域への配達を効率化
過疎地域や離島では、交通網が未整備であったり、道路が険しくトラックの通行が困難な場合があります。山間部では道路状況が悪く、離島への配送は空輸や海運に限られ、時間とコストがかかることが多いです。このような地域での物流は、住民の生活に直結する重要な課題となっています。
ドローンを活用することで、これらの課題を解決できます。上空を飛行するドローンは、地形に左右されず最短ルートで目的地まで荷物を届けることが可能です。これにより、山間部や離島でも迅速かつ安全に物資を輸送できます。特に、人や車では移動に時間がかかる場所でも、ドローンであれば短時間での配送が可能であり、配達時間の短縮につながります。
また、高齢者が多い過疎地域では、車の運転ができず日用品や食品を購入するのが困難なケースもあります。ドローン配送が実現すれば、こうした地域でも生活必需品をかんたんに入手できるようになり、住民の生活の質が向上します。自治体や支援機関の負担も軽減され、地域全体の活性化にもつながります。
交通渋滞を緩和
ドローンの活用は、交通渋滞の緩和につながります。従来の物流では、荷物の増加や配送回数の増加に伴い、走行するトラックの台数が増え、これが交通渋滞を引き起こす要因のひとつとなっています。特に都市部では渋滞が頻発しやすく、配達が遅れる可能性が高まります。ドローン配送は上空を飛行して荷物を運ぶため、道路という既存インフラに制限されず、交通渋滞の影響を受けません。
また、道路の改修に比べてインフラ整備コストを抑えられる点も大きなメリットです。地上交通に依存しない物資の輸送が可能となることで、走行するトラックの台数を減少させ、交通量の削減に寄与します。
さらに、物流トラックの減少は、大気汚染や騒音の低減といった環境面でのメリットももたらします。ドローンの活用は、物流の効率化だけでなく、都市の交通問題や環境問題の解決にも貢献します。空を活用することで、道路の混雑状況に左右されず、効率的で持続可能な物流システムの構築が可能となります。
ドライバー不足の解消
近年、ネット通販の拡大により物流需要が急増し、トラックドライバーの人手不足が深刻な問題となっています。ドライバー不足は配送遅延や物流コストの増大を招き、企業の経済活動と消費者の生活に影響を及ぼします。ドローン配送を導入することで、無人での配送が可能となり、ドライバーの人手不足を補うことができます。特に効率の低い過疎地や山間部での活用は、人件費の削減と業務効率の向上につながります。ドローンの活用は物流の無人化・省人化・自律化を推進し、ドライバー不足という業界全体の課題解決に寄与します。
医療分野
災害・事故現場の情報収集
地震や洪水、土砂崩れなどの自然災害が起きた際、人間が直接現場に赴くことは危険が伴い、また時間がかかる場合があります。ドローンを活用することで、被災地の広範囲な状況を迅速かつ安全に把握することが可能となります。
まず、ドローンは高解像度のカメラや各種センサーを搭載しており、上空から被災地の詳細な映像やデータをリアルタイムで収集できます。これにより、被害の規模や範囲、被災者の位置情報などを迅速に把握し、救助活動や復旧計画の立案に役立てることができます。また、赤外線カメラを用いることで、瓦礫の下にいる生存者の発見や、夜間での活動も可能となります。
さらに、ドローンはアクセスが困難な場所や危険なエリアにもかんたんに到達できます。これにより、二次災害のリスクを低減しながら、必要な情報を収集することができます。例えば、化学物質の漏洩が懸念される現場や、放射線レベルが高い地域でも、人間が立ち入ることなく安全にデータを取得できます。
医療物資の緊急輸送
ドローンは、医療物資の緊急輸送においてもその有用性が高く評価されています。救急医療の現場では、時間が生命を左右することが多く、いかに迅速に必要な医療資源を届けるかが重要です。ドローンを活用することで、従来の交通手段では困難な迅速な輸送が可能となります。
交通渋滞や自然災害によって道路が寸断された状況でも、ドローンは上空を飛行するため、最短ルートで医療物資を届けることができます。これにより、緊急手術に必要な血液や臓器、救命薬品などを迅速に運搬し、患者の救命率を向上させることができます。離島や山間部などの医療資源が不足しがちな地域でも、ドローンによる医療物資の供給は大きなメリットをもたらします。定期的な物資の補給だけでなく、緊急時の対応にも柔軟に対応できるため、地域医療の質の向上に寄与します。
途上国における容易な物資輸送
途上国では、インフラの未整備や地形的な制約により、物資の輸送が困難な地域が多く存在します。道路や鉄道が整備されていないため、生活必需品や医療物資の供給が滞り、住民の生活や健康に影響を及ぼしています。ドローンを活用することで、これらの課題を解決し、容易な物資輸送が可能となります。
ドローンは地上のインフラに依存せず、上空を飛行して物資を届けることができます。これにより、山岳地帯や密林、河川が多い地域でも、最短ルートでの輸送が可能です。特に緊急時には、救援物資や医療品を迅速に届けることができ、被災者の救助や疾病の拡大防止に役立ちます。
ドローンを活用する上での課題
対候性が不十分
ドローンは精密機械であるため、雨や湿度などの気象条件に対して耐候性の課題を抱えています。その理由は、内部に繊細な電子機器が搭載されており、水分によるダメージを受けやすい構造であることに起因します。非防水のドローンでは、雨天時に内部へ水が侵入し、ショートや故障を引き起こすリスクが高まります。
また、高湿度の環境では、回路やバッテリーが損傷しやすく、性能低下や寿命の短縮につながります。さらに、小型であるドローンは強風や降雨の影響を受けやすく、飛行の安定性が損なわれ、墜落のリスクも増加します。これらの課題を克服するためには、使用環境に適応した耐候性を備えることが重要です。対策が講じられない場合、物流や医療分野での安定的な物資輸送は難しいと言えます。
航路の未整備
現在、ドローンが飛行するための明確な航路や空域のルールが十分に整備されておらず、安全性や効率性の面で問題が生じています。特に都市部や人口密集地では、建物や他の航空機との衝突リスクが高まるため、適切な飛行ルートの設定が困難です。
また、ドローンの飛行高度や範囲にかんする規制が明確でない場合、操縦者は法令違反や事故のリスクを負うことになります。これにより、ドローン活用が思うように進まない現状があります。例えば、医療物資の緊急輸送を行おうとしても、飛行ルートの安全性が確保されていないと、迅速かつ安定的な配送は困難です。
この問題を解決するために、国や自治体は積極的な取り組みを進めています。国土交通省は、ドローンの安全な飛行を確保するためのガイドラインや規制を策定し、ドローン専用の飛行ルートや空域の設定を検討しています。この取り組みにより、ドローンの安全な運用環境が整備され、活用がさらに促進されることが期待されています。
企業におけるドローンの活用事例
KDDI株式会社
KDDI株式会社は2023年2月、KDDIスマートドローン株式会社と日本航空株式会社、株式会社メディセオ、東日本旅客鉄道株式会社、株式会社ウェザーニューズと共同で、ドローンを活用した医療物資輸送の実証を東京都あきる野市で展開しました。これは、ドローンの「レベル4飛行 (有人地帯における補助者なしの目視外飛行) 」を視野に入れた、医薬品や検体を輸送する1か月間という長期にわたる実証を通じて、ドローンを活用した医療物資輸送の課題と可能性がさまざまに検証されています。
この取り組みのゴールは、東京都内の医療機関等を対象に、医薬品や検体といった医療物資を、ドローンを使って迅速に配送することで、最終的には2025年度にドローン物流ビジネスを立ち上げることを目指しています。
株式会社ケーエスケー
株式会社ケーエスケーは、災害で陸路が断たれた場合や、通常時のへき地への医薬品配送を想定し、ドローンを使った実証実験を進めています。このプロジェクトは国土交通省の「無人航空機等を活用したラストワンマイル配送実証事業」に採択され、ケーエスケーをはじめ、和歌山県立医科大学、和歌山県、日高川町、そしてプロジェクトマネージャーとしてNTTコミュニケーションズ株師会社が参加しています。
大和物流株式会社の用語集によると、「ラストワンマイル」とは、最終拠点からエンドユーザーへの物流サービスのことを指す物流用語です。つまり、「最後の1マイル」という距離的な意味ではなく、お客様へ商品を届ける物流の最後の区間のことを意味します。
2023年10月24日には日高川町で実証実験が行われ、ドローンによる医薬品の長距離配送と、配送ロボットを使ったラストワンマイルの運搬が検証されました。
株式会社センシンロボティクス
株式会社センシンロボティクスは、出光興産株式会社と共同で、北海道苫小牧市の北海道製油所において、自動で離着陸できるドローン「DJI Dock 2(ディージェーアイドックツー)」を使ったタンクヤードの遠隔リアルタイム点検の実証実験を行い、その有効性を確認しました。
従来のドローン活用では、準備や操縦、片付け、撮影した画像の確認など、多くの時間が必要で、点検の効率化に課題がありました。そこで、「DJI Dock 2」を導入することで、これらの作業を省略し、遠隔から効率的に点検や監視ができることが可能になりました。
かんたんにできる医療DXには予約システムRESERVA
医療機関がかんたんに導入できるセキュリティ対策として、おすすめなのが予約システムの導入です。予約システムの機能は、来院や面会の予約管理にとどまらず、決済から顧客管理、さらにスタッフやリソースの調整に至るまで自動化する機能を持つシステムです。複数のツールやプラットフォームを切り替える手間は一切不要で、これにより、医療機関の業務プロセスがより効率的に進められるだけでなく、来院者にとってもわかりやすく使いやすい環境が提供されます。
現在多数の予約システムがありますが、医療機関が効率的にDXを促進するためには、患者のデータセキュリティ対策が厳重なRESERVAをおすすめします。RESERVAは、30万社が導入、700以上の医療機関も導入したという実績がある国内No.1予約システムです。予約受付をはじめ、機能は100種類を超えており、医療機関の業務プロセスがより効率的に進められます。初期費用は無料で、サポート窓口の充実やヘルプの利便性が高いため、予約システムの初導入となる病院、クリニックにもおすすめです。
さらにRESERVAは、ISMS認証(ISO 27001)、ISMSクラウドセキュリティ認証(ISO 27017)を取得しており、不正アクセス対策やデータの保護・暗号化の実施もされているため、安全にデータを管理することができます。
まとめ
本記事では、さまざまな産業で活用されているドローンを物流・医療分野におけるメリットや課題、企業の活用事例を具体的に解説しました。ドローンは、過疎地域や災害地域への物資輸送を容易にし、運搬に必要なドライバー不足の解消に貢献するなど多くのメリットをもたらします。この技術は、物流・医療分野を超え、さまざまな分野で革新的なソリューションを提供し、社会や産業への貢献が期待される分野です。
RESERVA mdでは、引き続き医療機関の情報セキュリティに関する知見や事例を紹介していきます。