バイオセンサーとは?
バイオセンサーは、生物の働きや特徴を利用して、特定の物質を検出・測定するためのセンサーです。例えば、血液中の糖の量(血糖値)を測る機器や、ウイルスや病原体を見つける医療機器に使われています。バイオセンサーは「生物学的な要素」と「電子技術」が組み合わさって作られており、主に3つの部分で構成されています。
1つ目は「生体認識素子」という部分です。これは、特定の物質を見つける役割を持ち、酵素や抗体、DNA、細胞などの生物学的な材料が使われます。2つ目は「変換器」と呼ばれる部分で、生体認識素子が検出した物質の情報を電気信号などに変換します。最後の3つ目は「検出器」で、変換された信号を数値やデータとして表示する役割を果たします。これによって、人の目では見えない微量の物質も正確に測定が可能になります。
医療現場にバイオセンサーを導入するメリット
医療現場にバイオセンサーを導入するメリットには次のようなものがあります。
・患者負担の軽減
バイオセンサーを使えば、わずかな血液や唾液などで迅速に測定が可能です。糖尿病患者が血糖値を測る「血糖測定器」が代表例で、指先からわずかな血液を採取し、その場ですぐに数値がわかります。このように、身体への負担が少なく、検査の結果が短時間で得られる点は、患者にとって大きな利便性となります。さらに、バイオセンサーは小型化・携帯化が進んでいるため、病院に通う必要がなく、自宅や外出先でも手軽に検査を行えます。これは、慢性疾患を抱える患者の自己管理や、病気の早期発見につながり、結果的に医療費や通院の負担を減らす効果も期待できます。
・診断の迅速化と精度向上
バイオセンサーの導入は、診断を迅速かつ高精度に行える点で医療現場にとっても大きなメリットです。バイオセンサーを用いることで、現場ですぐに物質の検出や測定が可能となり、医師が迅速に診断や治療方針を決定できます。感染症の検査において、バイオセンサーを活用すれば短時間で病原体の有無を確認できます。これにより、早期治療が可能となり、重症化や感染拡大を防ぐ効果が期待されます。また、バイオセンサーは特定の物質だけを高い精度で検出できるため、従来の検査法よりも誤診のリスクを減らし、より正確な診断が可能になります。
・医療現場の効率化とコスト削減
バイオセンサーは、医療現場の業務効率を向上させ、コストの削減にも貢献します。従来の検査方法では、検体を採取し、分析機器を用いて検査を行うために多くの時間と人手が必要でした。また、外部機関に依頼する場合は輸送コストや設備利用料なども発生します。一方で、バイオセンサーは現場で直接測定が可能なため、これらの手間やコストを大幅に削減できます。また、病院内での検査業務が効率化されることで、医療スタッフは患者のケアや診察により多くの時間を割くことができます。これにより、医療の質が向上し、患者満足度の向上にもつながります。
医療分野における研究事例
ここではバイオセンサーの研究・開発事例を紹介します。
・複数の核酸・病原体の同時検出の実現:三菱マテリアル
三菱マテリアルは北陸先端科学技術大学院大学と共同で、固体電解質薄膜トランジスタを用いた新型バイオセンサーを開発しました。この技術により、PCR法を使わずとも短時間で核酸や病原体の検出が可能です。センサーの小型化により、複数の核酸を同時に検出することも可能で、検査時間やコストの削減が期待されます。医療現場や感染症対策での実用化が進む技術です。
・体の状態の即時把握が可能に:京セラ
京セラとヘルスケアシステムズが共同開発した装置は、尿や唾液から体内の栄養状態を短時間で測定できます。小型で持ち運びやすく、医療機関や薬局での即時検査が可能です。
・単層カーボンナノチューブを用いた高性能バイオセンサー:順天堂大学
順天堂大学では、生物の分子識別機能を応用し、単層カーボンナノチューブを用いた高性能バイオセンサーを開発しています。この技術は、従来の計測方法より安価で保存期限もなく、血糖値やケトン体を正確に測定できます。特に糖尿病患者の自己管理や透析治療の効率化に役立つと期待され、将来的には生活習慣病予防や医療費削減にも貢献します。
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まとめ
本記事では、「バイオセンサー」の用語解説と、その領域における医療分野の事例を紹介しました。
RESERVA mdでは、今後も医療DXに関する知見や事例を取り上げていきます。