ナノテクノロジーは、微細なスケールでの物質の制御を可能にし、医療分野に革新的な変化をもたらすポテンシャルを秘めています。これまでの医療技術では捉えきれなかった細胞や分子レベルでのアプローチが実現することで、治療法や手術方法が劇的に進化しつつあります。近未来医療におけるナノテクノロジーの活用は、より安全で効果的な治療の提供を目指し、患者一人ひとりに最適化されたアプローチを可能にします。
本記事では、ナノテクノロジーが医療分野にもたらす医療革新を最新の研究事例を交えて解説します。
ナノテクノロジーとは
ナノスケールの世界
ナノスケールとは、1ナノメートル(nm)から100ナノメートルの範囲を指し、このスケールでは物質の性質が従来のマクロやミクロスケールでは見られない特異な現象を示します。例えば、金属のナノ粒子は、大きさによって色が変わるという光学的性質を示すという物理現象を引き起こします。また、表面積が大きくなることから、触媒としての活性が格段に向上するなど、新しい機能の発見につながることもあります。このように、ナノスケールでは、人々の生活を根底から変える物質の新たな可能性が秘められています。
ナノテクノロジーの定義
ナノテクノロジーは、ナノスケールの世界で物質を制御し、操作する技術です。
文部科学省は、ナノテクノロジーを「ナノサイズ特有の物質特性を解明し、有用な機能の発現により新たな材料を創出する技術」と示しています。
ナノテクノロジーの市場規模
さまざまな分野での技術革新が期待されているナノテクノロジーの市場規模は、今後大きく拡大していくことが予想されます。
Data Bridge Market Research社が公表した「世界のナノテクノロジー市場 – 2030 年までの業界動向と予測」 では、2022 年に 73.3 億米ドルであったナノテクノロジー市場は、2030 年までに 1,145.4 億米ドルに増加し、2023 年から 2030 年の予測期間中に 41% の CAGR(年平均成長率)を達成すると予測されています。
ナノテクノロジーの医療への応用
最先端テクノロジーを産業分野のみならず、医療分野に積極的に応用することにより、これまで以上に高度な医療技術の確立が可能になると期待されます。
ドラッグデリバリーシステム
期待される技術の一つはドラッグデリバリーシステムへの応用です。ドラッグデリバリーシステムとは、ナノテクノロジーを活用することで、薬剤を包み込むナノ粒子を使用して、正確に病変部位に薬剤を届ける技術です。これにより、例えば抗がん剤自体の薬を体全体に投与するのではなく、がん細胞が集中している患部まで運搬することが可能になり、薬の副作用を非常に高い水準で抑えることができます。この技術が確立されることで、人類は薬の副作用といった問題から開放されることが期待されています。
遺伝子デリバリーシステム
ナノテクノロジーは、薬だけでなく遺伝子も目的とする細胞まで運搬することを可能にする遺伝子デリバリーシステムも実現します。すべての細胞に分化できる能力をもつ万能細胞であるES細胞(胚性幹細胞)に的確に運搬することで、細胞の分裂の方向性を制御できるようになり、目的とする臓器を、自身の体内で再生することが可能になります。
現在のES細胞を使った再生医療では、臓器を移植するにあたって人体を侵襲しなければならないという問題や、移植する臓器を人間以外の動物で再生する場合の倫理的な問題が存在していました。これらの問題は、ナノテクノロジーを活用した遺伝子デリバリーシステムとES細胞を使った再生医療が組み合わさること、つまり自身の体内で臓器や骨等を再生することで解決することができます。
ナノ診断器機
診断器機にナノテクノロジーを導入し超小型化することで様々なメリットがあります。現在、生化学検査はかなり進歩してきたものの、多くの量の血液が診療の際に必要となります。臨床検査の場合は、検査を委託して結果が戻ってくるまで、タイムラグがあります。そうした問題の解決に有効なのが、ナノ診断器機です。微細加工技術により制作されたナノ診断機器には、多数の小型センサーがついており、一滴の血液を送るだけで多項目の診断を迅速に行うことができます。
ナノ治療器機
ナノテクノロジーが活用された治療機器は、手術に革新をもたらします。手術用の顕微鏡を必要とする手術であるマイクロサージェリーが、マイクロレベルではなくナノレベルで実現できるようになると、現在よりも更に微細なレベルでの手術が可能となります。その上で、低侵襲が担保されると共に、人間の手や従来の器機では届かない領域での手術も実現します。ナノ治療器機による手術は、従来の手術では不可能だった治療方法を提供します。
ナノテクノロジーの最新研究事例
タンパク質を用いたがん治療およびNMR解析への利用の実証
参考:早稲田大学 公式サイト
早稲田大学大学院情報生産システム研究科と理化学研究所生命機能科学研究センターの研究グループは、2021年に報告した導電性高分子で被覆された金属製ナノチューブシートを改良することで、これまで細胞内に届けることが困難であったタンパク質の細胞内への輸送速度や細胞内での機能維持の向上を実現しました。
このナノ構造体は、がん細胞やマウス由来上皮細胞(NIH3T3)、ヒト由来繊維芽細胞(HPS)、脂肪由来幹細胞(MSC)、角膜上皮細胞(HCE-T)などのさまざまな細胞で活用できることが実証されています。
また、安定同位体標識タンパク質(ユビキチン)を、細胞内機能解析手法であるin-cell NMR解析に必要な1,000万個(107個)以上の細胞に対して、高効率かつ高生存率で導入することにも成功しました。
ガンマ線架橋したゼラチン-液体金属ナノ粒子の開発
参考:国立研究開発法人 量子科学技術研究開発機構 公式サイト
北陸先端科学技術大学院大学と先端科学技術研究科は、量子科学技術研究開発機構、高崎量子応用研究所などと共同で、量子ビーム(ガンマ線)架橋技術を用いて、安定な状態を保つことができるコア-シェル型のユニークな構造を有すナノ粒子の作製に成功しました。
得られたれたゼラチン-液体金属ナノ粒子は、EPR効果によって大腸がんを移植したマウス体内の腫瘍内に集積し、生体透過性の高い近赤外レーザー光により、がん患部の可視化と光熱変換による治療が可能であることを実証されました。さらに、マウスがん細胞とヒト正常細胞を用いた細胞毒性試験と生体適合性試験を行い、いずれの検査からもゼラチン-液体金属ナノ粒子が生体に与える影響は極めて少ないことが分かっています。今後、当該ナノ粒子と近赤外レーザー光を組み合わせた新たながん診断・治療技術の創出が期待されています。
医療DXの第一歩には予約システムRESERVA
医療DXの第一歩として、おすすめなのが予約システムの導入です。予約システムの機能は、来院や面会の予約管理にとどまらず、決済から顧客管理、 手術室の部屋管理、患者管理をも自動化する機能を持つシステムです。複数のツールやプラットフォームを切り替える手間は一切不要で、これにより、医療機関の業務プロセスがより効率的に進められるだけでなく、来院者にとってもわかりやすく使いやすい環境が提供されます。
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まとめ
本記事では、ナノテクノロジーが医療分野にもたらす医療革新を最新の研究事例を交えて解説しました。ナノスケールの世界は、医療に新たな可能性をもたらしています。
RESERVA.mdでは、今後も医療DXに関する知見や事例を取り上げていきます。