ブロックチェーンとは?医療業界での活用方法

ブロックチェーンとは、データを分散管理し、改ざんが困難な高いセキュリティを提供する技術です。もともとは2008年に仮想通貨ビットコインの基盤技術として登場し、その分散型で信頼性の高い仕組みが注目され、金融や物流、さらには医療分野にも応用が広がりました。医療業界では、患者情報の安全な管理や、医薬品のトレーサビリティ向上などでの活用が期待されています。本記事では、ブロックチェーンの基本的な仕組みから、医療業界におけるメリットや課題、具体的な活用事例までを詳しく解説します。

ブロックチェーンとは

ブロックチェーンは、複数のコンピュータでデータを共有し、分散型台帳として管理する技術のことを指します。データは「ブロック」と呼ばれる単位で格納され、それぞれが時系列にチェーン状に結びついています。この構造は、データの改ざんを非常に困難にし、高いセキュリティと信頼性を提供します。

従来の中央集権的なデータ管理システムとは異なり、ブロックチェーンは特定の管理者に依存せず、参加者全員がデータの正当性を確認できる仕組みです。これにより、高い透明性が担保されます。医療分野においても、この技術を活用することで、データの安全性、効率性が向上し、より安心な医療サービスの提供が期待されています。

ブロックチェーンでできること

ブロックチェーンでできることは、透明性で改ざん不可能な取引・データの記録を残すことです。この記録の対象は、仮想通貨や金融取引にとどまらず、証券取引、保険契約、物流の追跡、医療データの管理など、幅広い分野に適用されています。特に医療分野では、患者の電子カルテや医薬品のサプライチェーンの追跡、臨床試験のデータ管理などに利用されており、データの信頼性とセキュリティ向上に貢献しています。

ブロックチェーンの種類

ブロックチェーンには、主に3つのタイプがあります。

  • パブリックブロックチェーン
    誰でも参加可能で、ビットコインなどの仮想通貨で使われている代表的な形式です。完全にオープンなネットワークで、透明性と信頼性が高い一方、取引の処理速度が遅くなるという課題があります。
  • プライベートブロックチェーン
    特定の企業や組織内で使用されます。アクセス権が限定されており、企業内部でのデータ共有や医療機関内でのカルテ管理など、セキュリティとスピードが重視される場面に適しています。プライバシーが確保されるため、ビジネスでの利用が進んでいます。
  • コンソーシアムブロックチェーン
    複数の組織が共同で管理するタイプです。これにより、異なる組織間でのデータ共有が容易になり、サプライチェーン管理や金融機関間の取引に使用されます。各ブロックチェーンはそれぞれの特性を持ち、目的に応じた選択が可能です。

ブロックチェーンに注目が高まる背景

ブロックチェーンの注目度が高まる背景には、データ管理やセキュリティに対する需要の増加が大きく関係しています。インターネットの普及により、私たちは膨大なデータを扱う時代に突入しましたが、その一方で、データの改ざんやハッキング、個人情報の漏洩といった問題が深刻化しています。ブロックチェーンは、こうしたリスクに対する解決策として注目されています。

ブロックチェーン技術は、分散型台帳としてデータを管理するため、特定の中央機関が存在せず、参加するすべてのノードがデータの正当性を確認します。この構造により、データの改ざんが極めて困難であり、取引の透明性や信頼性が高まるため、金融業界や医療業界など多くの分野で導入が進んでいます。また、スマートコントラクトによって自動的に契約を執行できる点も、業務の効率化を図れるため、大きな関心を集めています。

医療業界におけるブロックチェーンのメリット

データの相互運用性の向上

医療業界では、患者の診療情報や検査結果、処方データなどが複数の医療機関にまたがって管理されていますが、システム間でのデータ共有がスムーズに行われていないことが課題となっています。ブロックチェーンを導入することで、こうしたデータの相互運用性が大幅に向上します。

ブロックチェーン技術を活用すれば、異なる病院や診療所、薬局などが同じ台帳にアクセスできるため、医療機関間でのデータ共有が迅速かつ安全に行えるようになります。これにより、患者が別の医療機関に移る際に過去の診療情報をかんたんに引き継げ、無駄な再検査や誤診のリスクを減らすことが可能です。また、ブロックチェーンによってデータがリアルタイムで更新されるため、医療従事者は常に最新の情報にもとづいて判断を下せます。さらに、データの一貫性が保たれるため、医療の質が向上し、患者に対してより迅速で適切な治療が提供できるようになります。

データ管理の透明性

ブロックチェーンは、医療データ管理において高い透明性を提供します。ブロックチェーンに記録されたデータは、時系列に沿って不変の状態で保存されるため、過去のデータや取引の変更履歴がすべて記録され、誰でもその履歴を確認することが可能です。これにより、データの正当性や信頼性が保証され、医療分野における不正や改ざんのリスクが大幅に減少します。

医療業界では、患者の病歴や処方履歴などの情報が重要な役割を果たしますが、そのデータが意図的に改ざんされたり、紛失されたりすると、患者に重大な影響を与える可能性があります。ブロックチェーンを利用することで、データの記録が常に公開されている状態となり、すべての関係者が安心してデータにアクセスできる環境が整います。また、監査や検証のための手続きが簡素化され、迅速な対応が可能となるため、医療機関の運営効率も向上します。こうした透明性は、医療の信頼性向上に大きく寄与します。

患者自身でデータ管理が可能

ブロックチェーン技術は、患者自身が医療データを管理できる新たなモデルを提供します。従来、医療データは病院や医療機関が管理していましたが、ブロックチェーンを利用すれば、患者が自分のデータに対して主導権を持つことが可能です。自身の医療データの利用方法や公開範囲など自決できる権利が得られるため、患者は自分の医療記録へのアクセス権を誰に付与するか、どの範囲で共有するかを自由に管理できます。

この仕組みにより、患者は自分の健康状態や診療履歴をかんたんに管理でき、必要に応じて他の医療機関に安全かつ迅速に情報を提供することができます。さらに、医療データが一元管理されないため、患者のプライバシーも強化されます。

ブロックチェーンの課題

データのプライバシーと規制対応

ブロックチェーンは、改ざん不可能な記録を提供することでデータの信頼性を高めますが、プライバシー保護の観点から問題となる場合があります。特に医療業界では、患者のプライバシー保護が最優先事項であり、医療データの不必要な共有や第三者へのアクセスが厳しく制限されています。しかし、ブロックチェーンに一度記録されたデータは改ざんや削除が困難であるため、誤った情報や不要な情報が記録されてしまった場合、その修正が問題となることがあります。

また、ブロックチェーンの運用には、各国・各地域の法規制への対応が不可欠です。それぞれ個人情報の保護に関する規制が異なるため、グローバルにデータを管理する場合、複雑な規制対応が求められます。例えば、欧州連合のGDPR(一般データ保護規則)は非常に厳格であり、そのルールを遵守しながらブロックチェーンを活用するためには、データの取り扱いに細心の注意が必要です。

データのスケーラビリティ

スケーラビリティとは、システムが処理できる一定の時間・一定の量の取引データ(トランザクション数)の限界を指します。ブロックチェーン技術が医療業界に普及するには、スケーラビリティの問題を解決する必要があります。ブロックチェーンでは、全てのノード(個々のコンピュータ)が同じ情報を共有し確認するため、利用者が増えるにつれて処理速度が遅くなるという特性があります。医療現場では、診療記録や検査データ、画像データなどの大容量データをリアルタイムで処理する必要がありますが、ブロックチェーンの遅延によって、対応できない可能性があります。

例えば、X線やMRI、CTスキャンなどのデータは非常に大きく、データを瞬時に処理するためには相当なスピードが必要です。しかし、ブロックチェーン技術の現状では、このようなデータを効率的に処理するのは困難な場合があります。

さらに、スケーラビリティの問題が引き起こすもう一つの課題は手数料の増加です。利用者が増えると、取引の承認に時間がかかり、その結果、迅速な処理を希望する場合には手数料が高くなります。医療業界においては、コスト管理も重要な要素であり、手数料が増加すれば、ブロックチェーンの利便性が低下する可能性があります。

医療業界におけるブロックチェーンの活用事例

日本医師会

日本医師会は、ラブロック株式会社が開発したブロックチェーンを利用した医療情報システム「J-DOME」(日本医師会 かかりつけ医 糖尿病データベース 研究事業)を取り入れました。「J-DOME」を通じて、これまで把握しきれなかった診療所かかりつけ医の糖尿病患者の診療データ、糖尿病治療の実態を収集し、医師の日々の治療に役立てることを目指しています。

アキュリスファーマ株式会社

アキュリスファーマ株式会社とサスメド株式会社は、ブロックチェーン技術を活用した世界初の治験実施に関する契約を締結しました。この技術は、治験におけるデータ入力やモニタリング業務を効率化し、信頼性を高めるものです。シミック株式会社も協力し、治験の質と効率向上を目指します。これにより、新薬開発コストの適正化とDXによる医療業務の効率化を通じ、医療課題の解決に貢献します。

エストニア共和国

エストニア共和国は、2008年に「e-Health」を導入し、医療情報の電子化を進めました。このシステムにより、国内すべての病院で診断や検査結果が電子的に管理され、患者はインターネット上で自身の医療データにアクセスできます。医師も患者の過去の診療記録や薬の服用履歴などを即座に参照できるため、適切な診断・治療が可能となりました。また、2010年には電子処方箋が導入され、患者はIDカードを提示するだけで薬を受け取ることができます。ブロックチェーン技術により、データのセキュリティとプライバシーも保護されています。

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画像引用元:RESERVA.md公式サイト

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まとめ

本記事では、医療業界で活用されているブロックチェーン技術について、メリットや課題を具体的に解説しました。ブロックチェーンは、医療データのセキュリティ強化や透明性の向上、患者自身によるデータ管理の可能性を広げ、医療機関と患者双方に多くのメリットをもたらします。この技術は、医療の効率性や信頼性を高め、今後さらに活用が期待される分野です。

RESERVA.mdでは、引き続き医療機関の情報セキュリティに関する知見や事例を紹介していきます。

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