メタバースによる遠隔医療|DXで変わる医療現場

メタバースとは、インターネット上に構築された三次元の仮想空間のことであり、超越を意味する「メタ」と、世界を意味する「ユニバース」が組み合わされた造語です。これまでメタバースは、主にゲームなどのエンターテイメントを中心に発展してきましたが、医療分野での活用に関心が高まっています。

メタバースには、医師不足や地域による医療格差の解消、患者の心理的障壁の軽減といった多くのメリットがある一方で、技術インフラやリテラシーの不足、セキュリティ・プライバシーの確保が難しいという課題もあります。

本記事では、このようなメタバースのメリットと課題について、具体的に研究・開発を行う企業や大学の事例を交えながら詳しく解説していきます。

メタバース×医療とは

メタバースとは、仮想現実(VR)や拡張現実(AR)などの技術を活用し、現実世界とは異なる仮想の世界を表現する環境を指します。医療のメタバースでは、患者の診断や治療、教育、リハビリテーションなどの領域で利用されています。

メタバース内の仮想環境を使用することで、疾患や治療方法について、患者に視覚的かつ体験的に説明できます。また、メタバース内の仮想クリニックや病院を構築し、遠隔診療やトレーニングを行うことも可能です。メタバースの活用によって、現実世界では難しい医療行為が可能になり、新しい治療法やアプローチによる医療領域の拡大が期待されています。

メタバース×医療のメリット

リアルなコミュニケーションが可能

メタバースでは、医師と患者がアバターを通じて、仮想空間上でリアルタイムにコミュニケーションを取ることができます。患者の微妙な表情や、身体の動きを確認することが難しかった従来のビデオ通話に比べて、メタバースでは手振りや視線、姿勢といった、非言語的要素も含めたコミュニケーションが可能になります。メタバースは、心理カウンセリングやリハビリなど、患者との対話や観察が重要な診療分野において、高い効果が期待されます。医師はより深く患者の状態を理解しやすくなり、患者も対面診療に近い感覚で診察を受けられるため、信頼関係の構築がスムーズになります。

地域による医療格差の解消

遠隔医療は、地域医療において最大の課題である「医師不足」の解消に役立ち、メタバースの活用によってさらに効果が高まります。メタバース空間では、都市部にいる専門医が仮想の診療室や病院に「訪問」し、リアルに近い形で患者を診察できます。専門医の不足が深刻な地方や過疎地、離島などでは、患者が都市部まで移動せずに高度な医療を受けられるため、地理的な要因による医療の質的・量的な格差が縮まり、全国どこでも均一な医療サービスを提供できます。

患者の心理的障壁を軽減

アバターを用いてコミュニケーションを取ることで、医師に顔を見せる必要がなくなり、患者の心理的ハードルを下げることが可能です。病院での診察やメンタルヘルスのカウンセリングは、患者にとって心理的障壁が高く、身体や心が弱っている時に、自らの健康に関するセンシティブな相談をするのは大きな負担となります。メタバース空間上で、アバターを通じた診療やカウンセリングを行うことで、お互いの表情や声色は感じ取りつつ、リラックスした状態でのコミュニケーションを実現できます。

メタバース×医療の課題

技術インフラの不足

メタバースを活用するには、VRデバイスや高性能なコンピュータ、安定した高速インターネット環境が必須です。しかし、医療を必要とする多くの地方や過疎地では、通信インフラが未整備であることが多く、必要な機器を整えるだけでも大きなコストがかかります。患者側だけでなく、医療機関にもシステム導入のための初期投資や運用コストが発生し、限られた予算の中で、病院やクリニックがどのように技術インフラを整備するかが課題となっています。

セキュリティとプライバシーの確保

医療情報は個人の最も重要なプライバシー情報であり、その取り扱いには厳格なセキュリティ対策が求められます。メタバース空間では、診療中に共有される患者の個人データがサイバー攻撃の標的となる可能性があり、データ漏洩や不正アクセスのリスクが高まります。また、仮想空間上でのコミュニケーションは新しい技術であるため、従来の医療データ管理基準がそのまま適用できないケースも考えられます。医療機関は法令遵守のもと、メタバース専用の高度なセキュリティ対策やプライバシー保護体制を構築する必要があります。

医療従事者・患者のリテラシー不足

メタバースの導入には、医療従事者と患者の双方に新しい技術の理解と操作スキルが求められます。しかし、デジタルリテラシーが低い高齢者や、VRデバイスの操作に慣れていない層にとっては大きな障壁であり、医療従事者側も新しいシステムに適応するためのトレーニングが必要です。トレーニングの実施には時間的・経済的コストが発生し、小規模な医療機関では、導入への抵抗感が強まることも考えられます。こうしたリテラシー不足を解消するには、操作が直感的でかんたんなシステム設計や導入サポートが重要となります。

メタバース×医療の活用事例

アステラス製薬

アステラス製薬では、メタバースを活用した先進的な情報提供手法の構築を進めています。場所・時間の制限がないオンラインコミュニケーションへの移行が進んだ一方で、現在の環境では「双方向性・対面でのコミュニケーションのメリット」を発揮しきれないという問題があります。そこで、メタバースの活用によって、医療関係者との全く新しい双方向コミュニケーションの実現を目指します。

仮想空間上で研究会や講演会を実施し、参加者同士の偶発的な情報交換など、コミュニケーションの高質化を図ります。また、バーチャルとリアルの融合によって、会場参加者とオンライン参加者の自由なコミュニケーションを実現できます。

参考:アステラス製薬「デジタルトランスフォーメーション(DX)

メンサポドクター

従業員が抱える職場やプライベートでのさまざまな問題に対し、外部の専門家によるアドバイスやサポートを行う、従業員支援プログラム「メンサポドクター」では、メタバースを活用しています。メタバースの導入によって、匿名性の担保や心理的障壁の緩和、自己開示の促進、空間による体験価値の向上が期待でき、利用者が相談しやすい仕組みが実現します。

アバターを用いて対話することで、利用者の潜在的な不満や不安・悩みを抽出し、適切なサポートを行うことが可能です。さらに、心理的負担を緩和するリラクゼーション空間等、自由に空間を構築できます。利用者は企業を介することなく、各自で直接面談を依頼できるため、相談していること自体を明かしたくない場合も安心して利用できます。

順天堂大学

順天堂大学では、順天堂医院の実物をオンライン空間で再現した「順天堂バーチャルホスピタル」を設立しました。病院訪問や交流など、バーチャルホスピタルで完結するサービスだけでなく、実物の病院の体験・案内をはじめとする、リアルとバーチャルを組み合わせたサービスなど、順天堂バーチャルホスピタルを起点にして、今後、さまざまな新サービスを開発・提供する予定です。

メタバースの活用によって、外出が困難な入院患者が、病院の外の仮想空間で家族や友人と交流できるバーチャル空間が実現します。また、説明が複雑になりがちな治療の疑似体験を通して、患者の理解や不安・心配の軽減にも寄与します。

予約システムRESERVAで、身近に始められる医療DXを実現

画像引用元:RESERVA md公式サイト

医療現場では、メタバースを活用しながら最善の診断、治療、教育を行うだけでなく、来院業務やスタッフの配置、備品の充填などの医療事務も最適化する必要があります。そうした業務を効率化するためにおすすめなのが予約システムの導入です。予約システムの機能は、来院や面会の予約管理にとどまらず、決済から顧客管理、さらにスタッフやリソースの調整に至るまで自動化する機能を持つシステムです。複数のツールやプラットフォームを切り替える手間は一切不要で、これにより、医療機関の業務プロセスがより効率的に進められるだけでなく、来院者にとってもわかりやすく使いやすい環境が提供されます。

現在多数の予約システムがありますが、医療機関が効率的にDXを促進するためには、実際に導入事例もあるRESERVAをおすすめします。RESERVAは、30万社が導入、700以上の医療機関も導入したという実績がある国内No.1予約システムです。予約受付をはじめ、機能は100種類を超えており、医療機関の業務プロセスがより効率的に進められます。初期費用は無料で、サポート窓口の充実やヘルプの利便性が高いため、予約システムの初導入となる病院、クリニックにもおすすめです。

まとめ

本記事では、メタバースのメリットや課題、実際に開発に取り組む企業や大学の事例について詳しく触れてきました。メタバースは、医師不足や地域による医療格差の解消、患者の心理的障壁の軽減を実現します。医療サービスの提供方法に悩んでいる医療機関の関係者は、ぜひ本記事を参考にしてください。

RESERVA mdでは、今後も医療DXに関する知見や事例を取り上げていきます。

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