医療のDX化が進む中で、遠隔画像診断(Tele-Radiology)が注目されています。これは、病院で撮影したCTやMRI、X線などの画像をインターネットや専用回線を用いて遠隔地に送り、放射線科の専門医が診断するシステムを指します。この診断方法は、専門医が少ない地方や離島で特に利便性が高く、地域医療の質を向上させることができます。
遠隔画像診断はさまざまなメリットを医療現場にもたらす一方、患者の個人情報を守るためのセキュリティ対策や、診断画像を送受信するために必要な通信環境の整備が課題となることがあります。これらを適切に解決しなければ、遠隔画像診断のメリットを十分に活かすことはできません。
本記事では、遠隔画像診断の仕組みやメリット、導入時に考慮すべきポイントをわかりやすく解説します。
遠隔画像診断の基礎知識

本章では、遠隔画像診断の概要や利用される技術、導入における法的・倫理的側面について解説します。
遠隔画像診断の定義と概要
遠隔画像診断(Tele-Radiology)とは、医療機関で撮影された画像データ(CT、MRI、X線、超音波など)を、インターネットや専用回線を介して、遠隔地にいる専門の放射線科医が読影し、診断結果を患者に提供する仕組みを指します。
遠隔画像診断の歴史は、1990年代にインターネットの普及とともに始まりました。当初は大病院と地方の医療機関を結ぶ形で導入され、2000年代に通信技術の向上により、高精度な医療画像を遠隔でやり取りする環境が整い、多くの医療機関で導入が進みました。
読影とは
「読影(どくえい)」とは、医療機関において撮影されたCT画像やMRI画像、内視鏡などの検査画像を専門医が読み解き、病気やケガの診断を行う行為を指します。
参照元:YKR medical labo「読影とは?読み方や活用される場面について徹底解説」
参考
・Japan Health Policy NOW「歴史から紐解く日本の遠隔医療」
・平澤 之規「遠隔画像診断 Current Status and Future of Teleradiology」特定非営利活動法人メディカルイメージラボ、2022年
利用される主な技術とシステム
遠隔画像診断の運用には、医療画像を管理・閲覧するためのシステムであるPACS(画像保管・通信システム)が活用される傾向にあります。さらに、遠隔地の医療機関に向けて迅速に画像やデータを送受信できるように、高速通信回線やクラウドサービスを整備することも求められます。
セキュリティ面では、患者情報の暗号化や厳格なアクセス管理を実施し、不正アクセスを防ぐ仕組みが必須です。
PACSとは
PACSとは、Picture Archiving and Communication Systemの略で、医療用画像管理システムのことです。一般撮影、CT、MRIといった画像撮影装置から受信した画像データを保管、閲覧、管理することを目的とします。
参照元:社会医療法人明和会「医療画像管理(PACS)」
導入における法的・倫理的側面
医療情報を取り扱うため、個人情報保護法や医師法の遵守が不可欠です。また、診断業務の責任の所在やデータの保管期間など、施設ごとにルールを策定しておくことが導入の前提となります。こうした法的・倫理的側面をクリアした上で、患者や医療機関のメリットが最大化するように診断を行うことが大切です。
遠隔画像診断のメリットと医療現場への影響
遠隔画像診断の導入は、医療機関の運営や患者の診療体験にさまざまな影響をもたらします。本章では、そのメリットを説明します。
専門医不足の解消と診断体制の強化
遠隔画像診断のメリットとしてまず挙げられるのが、専門医不足の緩和です。特に地方や離島など、放射線科医が常駐しにくい地域は、遠隔によって専門医の知見を得ることで、医療の質を格段に向上させることができます。また、大病院との連携によって、高度な診断が必要な場合でも医療体制を整えやすくなります。
24時間対応と診断スピードの向上
遠隔画像診断は、放射線医のグループや読影センターが24時間体制でサポートを行うケースがあり、夜間・休日の検査も実現しやすいです。これにより、急患対応が求められる症例でも患者は速やかに受診できるため、重症化の防止につながります。
患者満足度の向上と医療の効率化
専門医による診断は患者に安心感を与え、医療機関の信頼度向上にも寄与します。また、遠隔画像診断を導入することで、現場の医師や医療スタッフの負担が減り、検査の進行もスムーズになります。その結果、限られた医療リソースをより効果的に活用できるようになります。
遠隔画像診断の課題と今後の展望
遠隔画像診断はさまざまなメリットを医療現場にもたらす一方で、運用にあたっては課題も存在します。本章では、セキュリティリスクや通信環境の整備など、解決すべき課題と今後の展望について解説します。
セキュリティとプライバシー保護
データのやり取りがオンラインで行われる以上、サイバー攻撃や情報漏えいのリスクは避けられません。そのため、厳格なアクセス管理や暗号化通信の実施は前提として、さらに強固なセキュリティ対策が求められます。特に患者情報の管理においては、高いプライバシー意識を持ち、安全性を確保する取り組みが不可欠です。
通信環境の整備
高速かつ安定した通信環境を確保できないと、読影データの送受信に時間がかかり、診断の遅れや画像品質の低下が起こりえます。とりわけ、離島や地方の医療機関では、通信インフラの整備が十分でないケースが多く、遠隔画像診断のスムーズな実施が難しくなることがあります。そのため、このような地域では、専用回線の確保やクラウド技術の活用などが特に重要になります。
AI技術との連携とさらなる発展
以上のように、遠隔画像診断の運用にはさまざまな課題がともないますが、今後はAIを活用した診断システムの発展により、より高度かつ迅速な診断が可能になると期待されています。
具体的には、AIによる画像解析技術の導入によって、診断の精度と効率が向上することが挙げられます。AIが診断を補助し、病変の自動検出を行うことで、放射線科医の負担を軽減するとともに、見落としのリスクも減少します。
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まとめ
本記事では、遠隔画像診断の概要やメリット、導入における課題について詳しく解説しました。遠隔画像診断は、専門医不足の解消や診断スピードの向上、患者満足度の向上など、医療の質を高める多くの利点をもたらします。一方で、セキュリティリスクや通信環境の整備といった課題も存在し、運用の際には注意しなければならない事項も多く見られます。
遠隔画像診断の導入や運用に悩んでいる医療機関の関係者は、ぜひ本記事を参考にしてください。RESERVA mdでは、今後も医療DXに関する知見や事例を取り上げていきます。