コロナ禍を経て普及した医療DX|医療現場をシステム面で加速させる仕組みとは

COVID-19拡大による医療機関の逼迫は、日本国内のみならず世界的な問題となりました。医療従事者は感染リスクに直面しながら患者対応を行い、ベッド数や医療機器の不足が深刻化する状況が続きました。そして現在、コロナ禍を経て、感染リスクを抑えるための「接触を避ける医療」の必要性が急激に高まり、遠隔医療やデジタル技術の活用が注目を集めています。

こうした新しい医療方式を広めるにあたり、迅速な感染症の状況把握や医療資源の効率的な配分が課題として挙げられます。これにはリアルタイムでのデータ収集や分析が欠かせませんが、紙媒体や旧式のシステムを使用している多くの医療機関では、その準備が整っていません。そのような背景から、医療現場でのデジタル技術の導入が急務となり、DX(デジタルトランスフォーメーション)の必要性が急速に高まりました。

この記事では、医療DXの定義を確認し、コロナ禍により普及した医療DXの例を解説します。そして、こうしたDXが実際にどのように活用されているのか、全国の医療機関、企業からの事例を紹介します。

医療DXとは

医療DXの定義と3本の柱

厚生労働省によると、医療DXとは、「保健・医療・介護の各段階(疾病の発症予防、受診、診察・治療・薬剤処方、診断書等の作成、診療報酬の請求、医療介護の連携によるケア、地域医療連携、研究開発など)において発生する情報やデータを、全体最適された基盤(クラウドなど)を通して、保健・医療や介護関係者の業務やシステム、データ保存の外部化・共通化・標準化を図り、国民自身の予防を促進し、より良質な医療やケアを受けられるように、社会や生活の形を変えること」と定義されています。

医療DXは、サービスの効率化や質の向上により、以下の5点の実現を目指しています。

  1. 国民の更なる健康増進
  2. 切れ目なくより質の高い医療等の効率的な提供
  3. 医療機関等の業務効率化
  4. システム人材等の有効活用
  5. 医療情報の二次利用の環境整備

これらの実現に向け、日本では「医療DXの推進に関する工程表」にもとづき、①全国医療情報プラットフォームの創設、②電子カルテ情報の標準化等、③診療報酬改定DXを3本の柱とし、取組を進めています。

参考:厚生労働省「医療DXについて」

DXの重要性の浮上

コロナ禍が医療DXを推進した要因の一つは、遠隔医療やオンライン診療の需要の急増です。感染リスクを抑えつつ、患者が安全に医療サービスを受けられる仕組みが求められ、IT技術を活用した新しい診療形態が普及しました。特に、オンライン診療は急速に導入が進み、多くの患者と医師がその利便性を実感しました。

また、医療業務の効率化も重要です。従来、医療現場では紙ベースのカルテや情報管理が一般的であり、業務効率を阻む要因となっていました。これを解決するために、電子カルテや患者管理システムが注目され、データの共有化や検索性の向上が進みました。これにより、診療時間の短縮や医療従事者間の円滑な情報共有が実現しました。

さらに、AIやビッグデータを活用した医療の発展もDXの重要性を裏付けています。例えば、感染症の予測や治療法の研究にAIを活用することで、迅速かつ正確な判断が可能となりました。こうした技術は、医療現場における人的負担を軽減するだけでなく、患者にとっても質の高い医療を受けるための大きな助けとなっています。

コロナ禍を経て普及が進んだ医療DX

遠隔診療、オンライン診療

オンライン診療は、医師と患者がインターネットを通じて対話を行い、診断や治療を進める仕組みです。特に感染リスクのある高齢者や慢性疾患を抱える患者にとって、非常に有効な手段となりました。

オンライン診療により、患者の負担が軽減されるだけでなく、医療従事者のリソースを効率的に活用することが可能となります。また、地方や過疎地域に住む患者にとっては、医療へのアクセスが大幅に改善されるというメリットもあります。オンライン診療の適用範囲や保険適用の問題など、制度面での整備が求められているものの、オンライン診療は日本の医療提供体制における新たな選択肢として、今後ますます重要な役割を担うことが期待されています。

事例①|神田キリスト教診療所

神田キリスト教診療所は、戦後に生活困窮者を対象とした無料診療の奉仕活動を開始したことを契機に発足し、NPO(特定非営利活動法人)的組織を母体として診療活動を開始しました。その後、医療法人財団を設立し、現在は、外来診療、各種健康診断、産業医業務などの多様な医療サービスを提供するとともに、近隣の大学病院や専門施設等とのネットワークを介して、患者一人ひとりに最適な医療を提供する環境が整っています。

当診療所では、Zoomと連携したオンライン診療を行っています。診療の予約が完了した時点でオンラインミーティングが作成され、参加するためのURLやパスワードが予約者へメールで自動送信されます。このように、パソコンに詳しくなくても、かんたんに安全なオンライン面会を実施できます。予約を進めていくと、「診察券番号」や「健康保険証について」がアンケートで記入できるようになっています。また、予約メニューの説明には「オンライン診療の手引き」が掲載されており、クリックするとオンライン診療開始までの説明ファイルに遷移できます。

神田キリスト教診療所予約サイト:https://reserva.be/fukuin
診療所公式サイト:https://www.fukuin.net/

事例②|相模大野こどもクリニック

相模大野こどもクリニックは、相模大野駅より徒歩2分、ボーノ相模大野サウスモール内にある小児科です。風邪や頭痛、腹痛などの一般的な病気、手足口病、突発性発疹、はしか、水疱瘡、おたふくかぜ、小児のアレルギー乳幼児健診、予防接種まで、広く診療しています。

当クリニックはSkypeによる遠隔診療を予約制で開設しています。予約は承認制の設定となっているため、すぐに予約が確定せず、管理者が予約者情報を一度確認したうえで予約を受け付るかを決められます。この機能により、病院のイレギュラーな予定に合わせて、診療予約を事前に調整できます。一度予約受付を完了してからお断りのメールを送るよりも、予約受付時に確認する方がスムーズです。

相模大野こどもクリニック遠隔診療予約サイト:https://reserva.be/telecaresagamionokcl
クリニック公式サイト:https://www.sagamiono-kodomo-clinic.com/

各種ワクチン接種予約

コロナ禍を契機に、ワクチン接種予約システムの導入が急速に進み、効率的かつ公平に接種を実現するために欠かせないツールとなりました。

ワクチン接種予約システムは、自治体や医療機関が提供するオンラインプラットフォームとして、多くの利便性を提供します。例えば、住民は自宅からインターネットを利用して、自分の都合に合った日時を選び、かんたんに予約ができるようになりました。また、キャンセルや再予約もシステム上で迅速に処理できるため、運用側の負担軽減にもつながります。さらに、接種記録のデジタル化により、接種状況をリアルタイムで把握できる点も大きなメリットです。これにより、対象者がどの程度接種を終えたか、次回の接種がいつ必要かといった情報を効率的に管理できるようになりました。

ワクチン接種予約システムは、将来的には、インフルエンザや子どもの定期予防接種など、さまざまなワクチン接種に対応するための基盤として活用されるでしょう。こうしたシステムの普及は、住民にとっても医療機関にとっても、利便性と効率性の向上につながると言えます。

事例①|入間川病院

入間川病院は「周辺地域の人々のために」をモットーとするケアミックス病院です。急性期・回復期・在宅診療と幅広い医療ニーズに対応できる体制を整え、在宅復帰や介護、日常生活上の援助や看護を目的としたの関連施設で「地域医療・看護・介護をささえる」役割を担っています。当院には健康管理センターと透析センターがあり、地域住民の健康維持をサポートしつつ、医師の指示に基づき管理栄養士が個別の栄養相談を実施しています。

当院では各種ワクチンの接種予約をオンライン上で受け付けています。メニューはそれぞれカテゴリ分け、色分けされており、接種希望者はどのワクチンを予約するかが一目でわかります。また、各メニューに残席数を表示することで、ワクチン接種者の予約促進につながります。

入間川病院予約サイト:https://reserva.be/irumagawa_hospital
病院公式サイト:https://irumagawa-hosp.com/

事例②|今給黎医院

今給黎医院は、心筋梗塞、狭心症などの冠動脈疾患や心不全の診断、初期診療に取り組み、かかりつけ医として高血圧、糖尿病、脂質異常症等の管理に注力してきました。コロナパンデミック以降は発熱外来としての対応にも取り組み、患者一人ひとりの生活習慣に応じて、発症予防対策や再発予防対策を提案し、必要な医療を提供するように努めています。

当医院では、コロナワクチンの接種をオンライン予約で受け付けています。予約メニューの説明には、時間、ワクチンの種類、料金などが明記されており、安心して予約を進めることができます。また、予約受付締切を前日の17時に設定しているため、病院側はワクチンの数や予約者の情報を事前に把握でき、十分な準備が可能となります。

今給黎医院予約サイト:https://reserva.be/imakiire489
病院公式サイト:https://imakiire-hyuga.jp/

電子カルテや患者管理システム

電子カルテや患者管理システムは、医療機関内外での情報共有を容易にし、診療プロセスの効率化を実現します。従来、紙媒体のカルテは記入や管理に時間がかかり、情報の検索性にも課題がありましたが、電子カルテはこれを大幅に改善しました。特にクラウドベースの患者管理システムは、医師、看護師、薬剤師間でリアルタイムに患者情報を共有可能にし、診療時間の短縮や、処方ミスの削減につながります。さらに、患者自身が自身の診療情報を確認できる仕組みを提供することで、医療への参加意識が高まるという効果も期待されています。

一方で、導入に伴う課題も少なくありません。コスト面でのハードルはもちろんのこと、既存の医療機器やシステムとの互換性の問題も重要です。また、医療従事者が新しいシステムに慣れるための教育やトレーニングも必要です。それでも、電子カルテや患者管理システムは、医療DXの基盤として、今後ますます重要性を増していくことでしょう。

電子カルテについては以下の記事もご覧ください。
EHR(電子健康記録)|DX用語集

オンライン面会

コロナ禍で感染拡大防止の観点から病院や介護施設での面会が制限される中、オンライン面会の導入が注目を集めました。この仕組みは、家族や友人が入院中の患者や施設の利用者と画面越しに会話や交流ができるようにするもので、感染リスクを最小限に抑えつつ、心理的なつながりを維持する手段として期待されています。

オンライン面会では、タブレット端末や専用アプリケーションを利用して、離れている家族がリアルタイムで患者と会話できる環境を提供します。これにより、従来の「面会禁止」の壁を乗り越え、多くの患者や利用者が孤立感や不安を軽減できます。特に高齢者や重病患者にとって、家族とのつながりは精神的な支えとなり、回復にも寄与すると考えられています。

オンライン面会は感染症拡大の時代において、新たなコミュニケーションの形として定着しつつあります。今後は技術の進化に伴い、より使いやすいシステムや、音声・映像の品質向上が期待されています。また、介護施設や病院におけるリモート交流の事例が増えることで、患者や家族の満足度向上に寄与することは間違いありません。オンライン面会は、単なる代替手段ではなく、医療や介護の質を向上させる新しいアプローチとして、今後も注目されるでしょう。

オンライン面会については以下の記事もご覧ください。
予約システムで実現するオンライン面会・オンラインカウンセリング

医療DX導入に伴う課題

技術的課題

医療DXの推進には技術的な課題も多く存在します。最も大きなハードルの一つはシステム導入に伴うコストです。特に中小規模の医療機関にとって、高額な初期投資は大きな負担となり得ます。また、既存の医療機器やシステムとの互換性の問題も深刻です。多くの医療機関では、長年使用してきた設備やソフトウェアを運用しており、新しいシステムとの統合には時間とコストがかかります。

さらに、医療データは非常に高いセキュリティ基準が求められるため、クラウドシステムの導入には慎重な検討が必要です。万が一データ漏洩が発生すれば、患者や医療機関に多大な影響を及ぼす可能性があります。このため、安全性と使いやすさの両立が課題となっています。

これらの技術的な課題を解決するためには、政府の補助金や助成金制度の活用が鍵となるでしょう。また、技術を提供する企業と医療機関が連携し、現場のニーズに即したシステムを開発することが重要です。

人的課題

医療DXの推進には、技術だけでなく人的課題が大きく影響しています。例えば医療従事者のITリテラシーの差は、システムの円滑な導入や運用に直接関わる重要な要素です。これまで医療現場では、紙媒体や従来型のツールが主流であったため、デジタル化に対する抵抗感や学習の負担が課題として浮上しています。特に、高齢の医療従事者が多い現場では、新しいシステムの操作方法を習得する負担が大きく、導入初期には混乱を招くケースも見られます。また、現場が忙しい中でDXに関する研修やトレーニングを行う時間を確保すること自体が難しいという問題もあります。その結果、システムを十分に活用できない状況が発生し、DXの効果が十分に発揮されないケースが散見されます。

こうした課題に対処するためには、医療従事者向けには、負担を最小限に抑えた研修プログラムや現場でのサポート体制を整えることが必要です。人的課題の克服は、医療DXの成功に欠かせない要素と言えるでしょう。

規制やプライバシーの問題

医療DXの進展には、規制やプライバシーに関する課題も避けて通れません。特に医療データは、患者の健康情報や診療記録といった高度にセンシティブな情報を含むため、適切な管理が求められます。

例えば、医療データをクラウドシステムに保存・共有する際には、高度なセキュリティ対策が必要です。しかし、セキュリティ強化のためのコストや技術的な知識が不十分な場合、データ漏洩やシステムの不正利用といったリスクが発生する可能性があります。また、国や地域によって規制が異なるため、統一的な運用を行うことが難しく、特に複数の医療機関やシステムが関わる場合に調整が必要となります。さらに、患者のプライバシー保護と利便性のバランスも課題です。例えば、患者が自身の診療記録をオンラインで閲覧できる仕組みは便利ですが、その際に第三者による不正アクセスを防ぐ対策が欠かせません。

これらの課題を解決するためには、技術的なセキュリティ強化に加え、明確で実効性のある規制の整備が求められます。同時に、患者と医療機関の間で信頼関係を築くことが不可欠です。透明性の高い情報管理と、患者の権利を尊重した運用体制の確立が、医療DXの普及を支える鍵となるでしょう。

予約システムRESERVAで、身近に始められる医療DXを実現

画像引用元:RESERVA md公式サイト

医療現場では、手間やコストを抑えて最大限の効果が得られる医療DXを導入することが大切です。そうした業務を効率化するためにおすすめなのが予約システムの導入です。予約システムの機能は、来院や面会の予約管理にとどまらず、決済から顧客管理、さらにスタッフやリソースの調整に至るまで自動化する機能を持つシステムです。複数のツールやプラットフォームを切り替える手間は一切不要で、これにより、医療機関の業務プロセスがより効率的に進められるだけでなく、来院者にとってもわかりやすく使いやすい環境が提供されます。

現在多数の予約システムがありますが、医療機関が効率的にDXを促進するためには、実際に導入事例もあるRESERVAをおすすめします。RESERVAは、30万社が導入、700以上の医療機関も導入したという実績がある国内No.1予約システムです。予約受付をはじめ、機能は100種類を超えており、医療機関の業務プロセスがより効率的に進められます。初期費用は無料で、サポート窓口の充実やヘルプの利便性が高いため、予約システムの初導入となる病院、クリニックにもおすすめです。

まとめ

医療DXは、単なる効率化の手段にとどまらず、医療を進化させる鍵となります。コロナ禍後も、AIやIoT、ブロックチェーン技術を活用した医療データの安全な共有が進めば、患者と医療機関の信頼関係もさらに強化されるでしょう。医療現場にDXの導入を検討している医療機関の関係者は、ぜひ本記事を参考にしてください。

RESERVA mdでは、今後も医療DXに関する知見や事例を取り上げていきます。

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