デジタル治療(DTx)の現状と可能性|アプリケーションによる疾患管理の効果

デジタル治療(DTx)は、医療のデジタル化が進む中で注目を集める新しいアプローチです。日本では「治療用アプリ」と呼ばれることもあり、患者が自らの健康状態をリアルタイムでモニタリングし、症状管理を行うための重要な取り組みとして注目されています。医療へのアプリケーションの導入は、より正確な診断や治療計画の策定に効果的であるため、患者の治療効果を最大化することが期待されています。

本記事では、デジタル治療(DTx)について具体的な事例を交えながら詳しく解説します。

デジタル治療(DTx)とは

米国のデジタル治療提供企業の業界団体である「Digital Therapeutics Alliance」は、デジタル治療(DTx:Digital Therapeutics)を「医学的疾患や疾病の予防、管理、治療のために、エビデンスに基づく治療的介入を行うもの」と定義しています。日本では「治療用アプリ」とも呼ばれており、多くの医療現場でアプリケーションの導入が進められています。

DTxが注目される背景

日本でデジタル治療(DTx)に関心が集まったきっかけは、2014年11月における旧薬事法の改正です。この改正により正式名称を「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」と呼ぶ現在の薬事法が制定され、ソフトウェアも医療機器として規制対象となりました。その後、2017年にデジタルヘルス分野の業界団体「Digital Therapeutics Alliance」が設立されたことにより、DTxの普及がさらに加速しました。

DTxに参入する疾患領域の特徴

DTxはあらゆる医療に対応するわけではありません。現在は、主にデータやデジタルを活用しやすい疾患領域での参入が進んでいます。DTx市場の熟成度が高い疾患領域としては内分泌、CNS(中枢神経)、循環器が挙げられます。これらの疾患領域に共通するのは、リモートでのモニタリングと相性が良いという点です。

DTx市場の成長性

DTx市場は大きな成長が期待できる市場です。

米国を拠点とする市場調査およびコンサルティング会社であるGrand View Research社の調査では、DTxの世界での市場規模は、2024年から2030年にかけて27.2%で成長すると予想されています。成長の要因としては、スマートフォンの普及や新型コロナウイルスの感染拡大、慢性疾患の発生率の上昇などが挙げられています。

治療用アプリケーションを導入するメリット

診療の質の向上

治療用アプリケーションを導入する最も大きなメリットは診療の質の向上です。

医師は、治療用アプリケーションに記録された患者の健康データを随時確認することができます。こうした細かなデータの収集により、医師は患者の状態に応じた、より効果的な医療ソリューションを提供につなげられます。また、患者は日常生活の中でリアルタイムに健康状態をモニタリングできるため、症状の変化を早期に把握することが可能です。その結果、患者は適切なタイミングで医療機関に相談することが容易になるため、病気の進行を防ぐことにつながり、治療効果を高めることが期待されます。

このように、治療アプリケーションの導入は、細かな診療情報の取得と患者の自己管理を促進するため、診療の質の向上に効果的です。

使用する医薬品の減少

治療用アプリケーションを通じた患者の服薬状況や健康データのリアルタイムでの取得により、医療従事者は個別の状況に応じた治療計画を立てやすくなります。これにより、薬剤の適正使用が促進され、使用する医薬品を削減することが可能です。

また、医薬品を削減できれば、国内の医療費を減少させる効果も期待できます。日本の医療費は増加の一途を辿っており、少子高齢化による「支え手不足」も問題になっているため、医療費削減への貢献は重要です。

医療機関同士の連携の強化

治療用アプリケーションの導入は、医療機関同士の連携を強化する重要な要素です。アプリを通じて患者の健康データや治療経過を容易に共有できるため、異なる医療機関間での情報の流通が円滑になります。これにより、患者の診療歴や治療方針を迅速に把握でき、医療の質を向上させることが可能です。

医療機関におけるアプリケーションの導入事例

ニコチン依存症治療アプリ|医療法人社団 佐介会 田中クリニック

参考:医療法人社団 佐介会 田中クリニック 公式サイト

医療法人社団 佐介会 田中クリニックでは、ニコチン依存症を対象とした治療で「CureApp SC ニコチン依存症治療アプリ及びCOチェッカー」といアプリを活用しています。

アプリの主な機能は4つで、チャット機能や治療プログラム機能、実践管理機能、禁煙日記機能です。これらの機能とCOチェッカーによる記録により、患者一人ひとりへの個別化された禁煙治療の提供が実現しています。

高血圧症治療アプリ|おきた内科クリニック

参考:おきた内科クリニック

おきた内科クリニックは、高血圧治療のサポートとしてアプリ「CureApp」を導入しています。このアプリは開発元である株式会社CureApp社が、2022年4月に薬事承認を取得したことにより、2022年9月1日より保険収載による医療機関での処方が開始されました。このアプリを活用することで、患者は高血圧の知識や治療法などを学ぶことができます。また記録した血圧は可視化された上で、医師側と共有されるため、医師はリアルタイムな経過観察を行えます。

うつ病治療アプリ|市ヶ谷ひもろぎクリニック

参考:アン-サポ 公式サイト
参考:市ヶ谷ひもろぎクリニック

うつ病治療アプリ「アンサポ」は、うつ病治療をサポートする無料のウェブサービスです。目に見えず、分かりにくいうつ病を定量化することで可視化し、患者の治療経過の正確性を高めることを目指して構想、開発されたアプリです。このアプリを活用することで、患者は自身のセルフチェックが容易になります。市ヶ谷ひもろぎクリニックは、このアプリについての講演を行っており、治療の際に活用しています。

自己血糖測定アプリ|医療法人 SOUND SLEEP 仙台内科睡眠クリニック

参考:医療法人 SOUND SLEEP 仙台内科睡眠クリニック 公式サイト

医療法人 SOUND SLEEP 仙台内科睡眠クリニックの糖尿治療では、自己血糖測定アプリ「リビール(Reveal)」 を採用しています。

従来の自己血糖測定器は、一回一回の血糖値しか確認できないため、血糖値がどのように変動しているのかが分かりにくいという問題点が存在しました。そうした問題点を解消したのがリビールです。このアプリは、当院で扱っている自己血糖測定器と連動しており、測定した血糖値がダイレクトにアプリの血糖一覧表に飛びます。これにより、血糖値の一連の流れが分かりどのように変化しているかを一目で確認することができます。また、クリニックが発行する病院コードをアプリに入力すると、医師のパソコンからもアプリの血糖値を見て解析することが可能なため、血糖値改善のためのより的確な治療が実現しています。

医療DXの第一歩に最適な予約システム「RESERVA」の導入

画像引用元:RESERVA.md公式サイト

医療機関がDXを推進するにあたって、まず最初に取り組むべきなのが予約システムの導入です。予約システムの機能は、来院や面会の予約管理にとどまらず、決済から顧客管理、さらにスタッフやリソースの調整に至るまで自動化する機能を持つシステムです。複数のツールやプラットフォームを切り替える手間は一切不要で、これにより、医療機関の業務プロセスがより効率的に進められるだけでなく、来院者にとってもわかりやすく使いやすい環境が提供されます。

現在多数の予約システムがありますが、医療機関が効率的にDXを促進するためには、実際に導入事例もあるRESERVAをおすすめします。RESERVAは、28万社が導入、700以上の医療機関も導入したという実績がある国内No.1予約システムです。予約受付をはじめ、機能は100種類を超えており、医療機関の業務プロセスがより効率的に進められます。初期費用は無料で、サポート窓口の充実やヘルプの利便性が高いため、予約システムの初導入となる病院、クリニックにもおすすめです。

まとめ

本記事では、デジタル治療(DTx)について具体的な事例を交えながら詳しく解説しました。治療用アプリケーションを医療に導入することで、診療の質の向上や使用する医薬品の減少、医療機関同士の連携の強化などのメリットが見込めます。

RESERVA.mdでは、今後も医療DXに関する知見や事例を取り上げていきます。

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