眼科で活躍するDX|デジタル技術が変える眼科診療の風景

眼科を取り巻く環境は人生100年時代が到来する中で大きく変化しています。加齢黄斑変性症や緑内障、白内障に代表される加齢性疾患は、今後ますます増加すると考えられます。急速な医学の進歩の結果、これら加齢性眼疾患の多くは適切な治療により、視機能障害による社会活動の低下を防ぐことが可能になりました。しかし、それでもなお様々な要因で適切な対応が出来ないケースが存在します。こうしたケースに対応する効果的な手段として推進されているのが医療DXです。

本記事では、眼科における課題とその有効施策である医療DXについて具体的な事例を交えながら解説します。

眼科における現状の課題

高齢化社会

高齢化社会への対応は、眼科における重要な課題です。加齢性眼疾患の多くは治療法が確立されている一方で、高齢者への定期的な診療提供が困難である点が問題視されています。

慢性疾患の患者の管理では、長期的な生活習慣の改善や定期的なモニタリングが求められます。薬物療法の調整も重要で、高齢者は副作用のリスクが高いため、慎重な対応が必要です。さらに、そうした診療の増加による医療リソースの不足や医療経済の圧力も課題であり、効率的なケアと予防的な介入が求められます。眼科医は、患者の健康維持と生活の質向上を目指して、多角的なアプローチを採る必要があります。

眼科医師数の地域格差

眼科における医師数の地域格差は大きな課題です。

厚生労働省が公表した「2023年度専攻医シーリングについて」によると眼科における足下充足率(=2018年度の足下医師数/2024年度の必要医師数)は、東京都で1.36倍、京都府で1.21倍、大阪府で1.20倍を記録している一方で、青森県で0.51倍、秋田県で0.67倍、福井県で0.68倍を記録しています。このことから都市圏で眼科医師が過剰に存在している一方で、東北地方を中心とした地方都市で眼科医師不足が深刻なことが分かります。

眼科医療費の高騰

厚生労働省が公表した「令和3年度 医療費の高騰」によると日本における眼科総医療費は2017年度から2021年度までの4年間で、7,679億円から8,172億円と493億円増の、約6.0%増加しています。眼科の医療費の高騰要因として、医療技術の革新や新薬の開発、より安全な医療を提供するためのコストの増加など、さまざまな要因が存在します。年々増加する医療費を限られた財源の中でいかにして適正に配分するかが、提供医療の質を向上させるために重要となってきます。

課題解決に効果的な医療DXとは

眼科における現状の課題を解決する取り組みとして、現在注目されているのが医療DXです。

医療DXの定義

厚生労働省によると、医療DXとは「保健・医療・介護の各段階(疾病の発症予防、受診、診察・治療・薬剤処方、診断書等の作成、診療報酬の請求、医療介護の連携によるケア、地域医療連携、研究開発など)において発生する情報やデータを、全体最適された基盤(クラウドなど)を通して、保健・医療や介護関係者の業務やシステム、データ保存の外部化・共通化・標準化を図り、国民自身の予防を促進し、より良質な医療やケアを受けられるように、社会や生活の形を変えること」と定義されています。

医療DXは、サービスの効率化や質の向上により、以下の5点の実現を目指しています。

  1. 国民の更なる健康増進
  2. 切れ目なくより質の高い医療等の効率的な提供
  3. 医療機関等の業務効率化
  4. システム人材等の有効活用
  5. 医療情報の二次利用の環境整備

これらの実現に向け、日本では「医療DXの推進に関する工程表」にもとづき、①全国医療情報プラットフォームの創設、②電子カルテ情報の標準化等、③診療報酬改定DXを3本の柱とし、取組を進めています。

参考:厚生労働省「医療DXについて」

眼科で医療DXを推進するメリット

眼科で医療DXを推進するメリットは以下の通りです。

ビッグデータの収集とAI研究への利活用

ビッグデータとAI研究への利活用により、眼科領域の発展が進められています。

日本眼科学会は、日本眼科AI学会JOIレジストリ(JOIR)を中心に、眼科診療情報の収集データベースを構築しています。従来のデータ収集は手作業が多く、収集データ量が限定的であったため、担当者の変更によって長期的に大量データを集めるのが困難でした。これに対し、ビックデータの収集により効率的にデータを収集することで、大量のデータが蓄積され、AI研究の推進が迅速に行うことが可能となりました。

また、このビッグデータの収集は、眼科医療の実態把握や眼科疾患の疫学調査、医療行政の立案、企業戦略の策定にも役立ちます。データ収集においては医療データの形式を統一することが重要で、これは診療の均質化や医療システムの改善、開発の迅速化につながります。

新しい医療体制の構築

眼科診療の中心は画像等の非接触性のものが多く、データのデジタル化はオンライン診療による非対面型医療に適しています。かつてオンライン診療は対面診療の補完的な立場でしたが、オンライン診療機器と通信やロジスティクスの発達により、その対象は広範囲なヘルスケア領域に拡大しています。眼科でリモート診療を推進することで、遠隔地に住む患者も専門的な眼科診療を受けやすくなり、地域格差の縮小につなげることが可能です。

また、診療予約システムや業務管理ツールの導入によって、待ち時間の短縮やスタッフの業務負担軽減が図られ、業務の効率化が進みます。これらの医療DXによる変革により、眼科医療の質が向上し、より迅速かつ効果的な医療サービスが提供される新しい体制が整備されます。

予防医療の強化

眼科における医療DXは、予防医療の強化にも大きく貢献します。

デジタル技術を活用することで、早期のリスク評価と疾患予防が進みます。AIや機械学習を用いた診断支援ツールは、眼底画像や前眼部の検査結果を詳細に分析し、疾患の兆候やリスクを早期に発見します。これにより、例えば糖尿病網膜症や加齢黄斑変性のリスクを前もって把握し、適切な予防策を講じることが可能です。

また、デジタルツールを使ったリスク評価は、個々の患者の生活習慣や健康状態に基づいた個別の予防プランを提供します。これにより患者に対して具体的な予防策や定期検診の提案ができ、疾患の進行の未然防止につなげられます。

眼科における医療DXの推進事例

ここでは、眼科における具体的な医療DXの推進事例を紹介します。

眼内内視鏡・眼内照明保持ロボット|九州大学病院

画像引用元:九州大学 公式サイト

参考:九州大学病院 公式サイト

九州大学は、東京工業大学、順天堂大学、山口大学およびリバーフィールド株式会社とともに、眼内内視鏡・眼内照明保持ロボット「OQrimo®(オクリモ)」を共同開発しました。

「OQrimo®」は、眼科医の要望から生まれた眼科手術専用の手術支援ロボットです。眼内内視鏡や眼内照明はなどのツールは、片手で保持しながら手術を行うことが多く、肝心の手術操作はツールを保持していないもう一方の片手のみで行っている場面が多くみられました。「OQrimo®」を活用することで、安全に眼内内視鏡や眼内照明を保持する片手で保持する必要がなくなり、術者は両手を使って操作を行うことができます。

オンライン診療|広島大学病院

参考:広島県DXコミュニティ 公式サイト

広島大学病院では、画像解析装置「モバイルスリットランプMS1」を活用して眼科の遠隔診療を実現しています。この装置は、高輝度LEDを採用しており、広範囲を照明することができます。額当てと頬当ての2箇所で保持できるため、安定した撮影が可能です。先端にはローラーがついており、眼球の端からスキャンしながら動画撮影も行えます。一方で、目の奥までを撮影できるような機器ではないため、病のあるなしを判別できる程度にとどまります。

こうした遠隔診療の実現は、眼科の医療現場における人員不足や解消や病気の早期発見、予防医療の充実に寄与しています。

生成AIを活用した医療文書向け文書生成|京都大学医学部付属病院

参考:京都大学医学部付属病院 公式サイト
参考:Fitting Cloud 公式サイト

京都大学医学部附属病院は、フィッティングクラウド株式会社との共同研究で、生成AIを活用した医療文書向け文書生成ソリューション「CocktailAI」を開発しました。

CocktailAIは、診療録から退院時サマリや診療情報提供書で用いる文章を生成します。求められる文章を生成するための工夫としてテンプレートを利用している点が大きな特徴です。京都大学医学部附属病院とフィッティングクラウド株式会社との共同研究による実証結果では、眼科退院時の診療情報提供書の作成において、生成された文章の56%が「そのままで利用可能」または「微修正のみで利用可能」と分類され、36%が「記載追加のみで利用可能」と分類されました。この結果、92%の文書に対して医師の文書作成タスクが大幅に軽減されることが判明しました。

CocktailAIは、生成AIが作成した文言と診療録を対比させ表示することができるため、医師は生成AIが生成した文言の根拠を容易に確認することができ、生成AIの課題となっている正確性に対する対応も可能となっています。

予約システム|酒井眼科

参考:酒井眼科 予約サイト

酒井眼科は、診療受付に予約システムRESRVAを導入しています。予約サイトでは、初診と再診のメニューを選択することで、それぞれの予約日時を確認することができます。また、予約受付締め切り日やキャンセル締切日が設定されているため、眼下の予約受付に関するすべての業務が自動化されていることが分かります。

予約システム|ハノマ眼科

参考:ハマノ眼科 阪急診療所 予約サイト

ハノマ眼科でも、診療受付に予約システムRESRVAを導入されています。「コンタクトレンズをはめるのが初めての方(初診)」と「ハードレンズ⇔ソフトレンズの種類変更などで装脱練習が必要な方」という二つの予約メニューが設定されています。メニューを開くとそれぞれの予約に関する詳細な説明を見ることが可能です。

眼科における医療DXにはRESERVA

画像引用元:RESERVA.md公式サイト

眼科がDXを推進するにあたって、おすすめなのが予約システムの導入です。予約システムの機能は、来院や面会の予約管理にとどまらず、決済から顧客管理、さらにスタッフやリソースの調整に至るまで自動化する機能を持つシステムです。複数のツールやプラットフォームを切り替える手間は一切不要で、これにより、医療機関の業務プロセスがより効率的に進められるだけでなく、来院者にとってもわかりやすく使いやすい環境が提供されます。

現在多数の予約システムがありますが、医療機関が効率的にDXを促進するためには、実際に導入事例もあるRESERVAをおすすめします。RESERVAは、28万社が導入、700以上の医療機関も導入したという実績がある国内No.1予約システムです。予約受付をはじめ、機能は100種類を超えており、医療機関の業務プロセスがより効率的に進められます。初期費用は無料で、サポート窓口の充実やヘルプの利便性が高いため、予約システムの初導入となる病院、クリニックにもおすすめです。

まとめ

本記事では、眼科における課題とその有効施策である医療DXについて具体的な事例を交えながら解説しました。適切な眼科治療を提供するためには、医療DXの推進が欠かせません。

RESERVA.mdでは、今後も医療DXに関する知見や事例を取り上げていきます。

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