サプライチェーンとは、原材料の調達から製品の製造、そして最終的な配送に至るまでのプロセスと活動を指します。その中でも医薬品のサプライチェーンは、人々の健康と生命を直接的に支える公衆衛生の基盤となるため、特に重要です。
コロナウイルスの流行を経験した今日、医薬品のサプライチェーン管理には様々な課題があります。具体的には、需要増加と供給不足、品質管理の厳格化、労働力不足といった問題が挙げられ、医薬品の供給に直接的な影響を与えています。
このような課題を解決するには、サプライチェーン管理のデジタルトランスフォーメーション(DX)が必要です。DXによって、需給予測の精度向上、品質保持のための情報共有、人手不足の解消が可能になり、全体的な運営の最適化が図られます。
本記事では、医薬品のサプライチェーンをDXする具体的なメリットと、実際にDXを推進する企業の事例について詳しく解説します。
医薬品のサプライチェーン
サプライチェーンとは
サプライチェーンとは、商品やサービスが生産者から最終的に消費者に届くまでの一連のプロセスと活動の流れを指します。これは、原材料の調達から製品の製造、そして配送に至るまで、多岐にわたるステップを包括しています。各工程は、異なる企業や地理的な場所から構成されることが一般的で、それぞれがサプライチェーンの一部として独自の役割を果たしています。
医薬品のサプライチェーンの重要性
医薬品のサプライチェーンは、公衆衛生の基盤となる極めて重要なシステムです。このシステムを通じて、医薬品は製造工場から医療施設や患者の手元に安全かつ効率的に届けられます。コロナウイルスのパンデミックを経験した今日、医薬品の連続的な供給は患者の健康と生命を直接的に支えるために不可欠です。
医薬品のサプライチェーンはグローバルな規模で運用されることが多く、異なる国々からの原材料調達や、複数国にまたがる製造・配送プロセスの管理が求められます。そのため、サプライチェーンを国際的な視点で調整することが公衆衛生に対する責任と結びついています。
医薬品のサプライチェーンにおける課題
需要増加・供給不足
新型コロナウイルスの流行は、世界中でワクチンなど医薬品の需要増加を引き起こしました。その一方、国際的な物流の停滞やロックダウン措置による工場の稼働停止によって供給が追い付かない状況が発生し、医薬品分野のサプライチェーンの脆弱性が露呈しました。
それに加えて医薬品は、原材料の調達を特定の地域に依存していることが多く、一旦問題が生じると製造が難しくなる傾向にあります。さらに、国による規制の違いなどの理由からサプライチェーンの変更を行いづらいという課題も抱えています。
品質・温度管理の厳格化
医薬品のサプライチェーンにおいて品質や温度を厳格に管理することは、製品の安全性と効力を保持するために非常に重要です。特にワクチンなどの医薬品は、輸送中に温度変化が生じると品質劣化のリスクが高まる可能性があります。そのため製造から輸送、保管、配送までの各工程で徹底的に品質を管理することが必須です。
これには高度な技術と各工程間での情報共有が必要であり、サプライチェーン全体での一貫した品質管理体制の確立が不可欠です。
労働力不足
労働力の不足も大きな課題です。特に、物流部門での人手不足は、医薬品の配送や管理において深刻な影響を及ぼしています。これは、労働人口自体が減少していることに加えて、医薬品の物流・配送に必要な専門知識を持つ人材を確保しにくいことに起因しています。
さらに配送業務の特性上、長時間労働が常態化しやすい環境も新たな人材の確保を困難にしています。
医薬品のサプライチューン管理をDXするメリット
AIとビッグデータを活用した需給予測
医薬品のサプライチェーン管理をDX化するメリットの1つは、AIとビッグデータを利用して需給予測を行えることです。これらのデジタル技術を活用することで、物流の効率化と正確な在庫管理が可能になります。精密な予測により急な需要変動に迅速に対応することができ、医薬品の適時配送が保証されます。
またDXによって、サプライチェーン内の地域差を考慮した需給管理も実現します。これにより、医療機関は常に必要な医薬品を適切な量で確保でき、医薬品が不足する課題を解消可能です。
サプライチェーン内の情報共有
医薬品のサプライチェーン管理のDXは、各工程間での情報共有を効率化することに加え、医薬品の品質管理を徹底する上でも重要な役割を果たします。リアルタイムでのデータ共有により、生産から配送に至る各段階での品質状況を詳細に把握でき、問題が発生した際には迅速に対処可能です。これにより、品質保持のための厳密なモニタリングが実現し、最終的に患者に安全で効果的な医薬品を提供できます。
労働力不足の解消
医薬品のサプライチェーン管理のDXによって、労働力不足を解消できます。直感的に操作を行えるデジタルツールを導入することで、複雑な医薬品の配送や品質管理のプロセスが簡略化されます。その結果、専門的な知識や経験を持たない人材でも医薬品の物流に携わることが可能になります。
さらに、AIによるデータ分析を活用することで、個々の従業員の学習進度や業務遂行能力を評価し、1人ひとりに合った育成計画を作成することができます。これにより、人材の即戦力化を図りつつ、全体の業務効率を向上できます。
サプライチェーンのDXを推進する企業の事例
Kinaxis(キナクシス)×Servier(セルヴィエ)
Kinaxis(キナクシス)は、製品の計画から配送までを一括管理するサプライチェーンソフトウェアを提供しているカナダの企業です。AIを稼働したソフトウェアは、製品の戦略計画から配送までのサプライチェーンをエンドツーエンドで管理可能であり、企業が予測困難な市場環境に迅速かつ効果的に対応できるよう支援します。
このソフトウェアを、フランス第2位の製薬会社であるServier(セルヴィエ)が導入しました。先述したように、医薬品のサプライチェーンは国際的な需要の変動や規制の違いに対応して管理することが難しいです。しかしServierはKinaxisのソフトウェアの導入によってサプライチェーンの透明性を確保でき、グローバルな規模で迅速に医薬品を配送可能になりました。
参考:Kinaxis公式サイト
参考:Servier公式サイト
参考:Kinaxis”Leading Pharmaceutical Company Selects Kinaxis to Cure Supply Chain Headaches”
日立製作所
再生医療製品などの医薬品は、プロセス全体で厳密な品質管理と情報のトレーサビリティを確保することが求められます。日立製作所は、高度なITシステムと生産設備を組み合わせた統合プラットフォームを開発し、再生医療製品のサプライチェーン管理をDX化しました。
このプラットフォームは、製品に用いる細胞の採取から生産、輸送、そして投与までの各段階でのデータを一元管理し、ステークホルダー間でリアルタイムの情報共有を可能にしました。これにより、製品の品質と安全性を保ちながら効率的に製品を配送できます。
日立のこの取り組みは、医薬品の品質管理に新たな基準を設け、患者に安全で効果的な治療を提供するための重要な役割を果たしています。
参考:HITACHI「個別化医療時代に向けた再生医療DXソリューション」
アルフレッサ株式会社
アルフレッサ株式会社は、医薬品の配送効率を向上させるため、ナビタイムジャパンと共同でナビゲーションアプリ「saios(サイオス)」を開発しました。このアプリは、最適な配送ルートの提案やデータ分析を行うため、配送作業を大幅に効率化します。
またsaiosは、配送ドライバーが医薬品の検品をバーコードで行うことを可能にします。先述したように、従来は検品にも専門知識が求められるなど、医薬品の物流には一般の物流管理にはない知識が必要でした。しかしアプリによってバーコードで検品可能なことから、経験や知識を持たない人材を活用することができます。
参考:アルフレッサ株式会社「高度な物流機能」
参考:日経BizGate「協業とDX推進で ヘルスケアサプライチェーン構築」
医療DXにはRESERVA
病院やクリニックのDX化でお困りの方におすすめなのが予約システムの導入です。診療予約や面会、予防接種など、予約管理と患者の管理を一元化します。予約システムの機能は、予約管理にとどまらず、決済から顧客管理、さらにスタッフやリソースの調整に至るまで自動化する機能を持つシステムです。複数のツールやプラットフォームを切り替える手間は一切不要で、これにより、業務プロセスがより効率的に進められるだけでなく、来訪者にとってもわかりやすく使いやすい環境が提供されます。
現在多数の予約システムがありますが、効率的にDXを促進するためには、実際に導入事例もあるRESERVAをおすすめします。RESERVAは、28万社が導入、700以上の医療機関も導入したという実績がある国内No.1予約システムです。予約受付をはじめ、機能は100種類を超えており、医療機関の業務プロセスがより効率的に進められます。初期費用は無料で、サポート窓口の充実やヘルプの利便性が高いため、予約システムの初導入となる医療施設の方にもおすすめです。
まとめ
本記事では、医薬品のサプライチェーンの特徴・課題や、DX化するメリットについて詳しく触れてきました。医療DXは、AIとビッグデータを活用した需給予測、サプライチェーン内の情報共有、労働力不足の解消を可能にします。DXを推進するにあたって課題を抱えている医薬品業界の方は、ぜひ本記事を参考にしてください。
RESERVA.mdでは、今後も医療DXに関する知見や事例を取り上げていきます。