訪問看護で活躍するDX|デジタル化で人手不足を解決する方法を解説

訪問看護業界では、深刻な人手不足や業務負担の増大といった課題が顕在化しています。こうした課題を解決するために、DXの推進が注目されています。DXの導入により、訪問件数の増加やスタッフの負担軽減、ケアの質向上が期待されるだけでなく、効率的な予約システムの活用で患者データの一元管理やスケジュールの透明化も実現できます。

本記事では、訪問看護におけるDXの利点と予約システムの導入による効果を詳しく解説します。

訪問看護における現状の課題

人材不足

訪問看護業界では、慢性的な人材不足が大きな課題となっています。特に、訪問看護師の需要が増加する一方で、実際に従事する看護師の数は不足しており、各施設での人材確保が難航しています。その背景には、訪問看護の仕事の負担が大きく、精神的・身体的なストレスがかかりやすい点が挙げられます。訪問先での単独業務が多いため、緊急時には高い判断力と迅速な行動が求められます。これに加え、訪問看護の報酬が他の医療職に比べて高くないため、経済的な動機づけが不足しているのも人材不足の原因です。

厚生労働省の「令和2年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」によると、2020年時点で訪問看護ステーションに就業している看護師等は、約6万人です。しかし、厚生労働省「医療従事者の需給に関する検討会 看護職員需給分科会 中間とりまとめ(概要)」では、2025年に訪問看護で必要とされる看護職は約12万人とされており、人手不足が深刻であることが分かります。

さらに、都市部と地方での人材格差も顕著であり、地方では特に訪問看護師の確保が難しい現状があります。こうした人材不足の問題は、訪問件数の減少や対応の遅れにつながり、患者のケアに影響を及ぼす恐れがあります。

患者データ管理・共有の難しさ

訪問看護の現場では、利用者のカルテや看護記録など、多くの書類を作成する必要があります。特に、手書きで記録を作成する訪問看護ステーションはまだ多く存在しており、同じ内容を複数の書類に記入するなどの重複作業が発生しています。その結果、書類作成に多くの時間を要し、本来の看護業務に充てるべき時間が圧迫されているのが現状です。例えば、訪問先で収集した情報を、オフィスに戻ってから電子カルテに手入力すると手間がかかるため、業務効率が低下する要因にもなっています。こうした事務作業の負担を軽減し、書類作成に費やす時間を短縮することが、訪問看護の重要な課題です。

また、訪問看護では医師、ケアマネージャー、薬剤師など多職種との連携が不可欠です。利用者に対するケアは主治医の指示に基づくことが多く、他職種との情報共有が円滑に行われないと、ケアの質に影響を及ぼす可能性があります。特にケアマネージャーとの連携は、ケアプランの策定や他の介護・福祉サービスとの調整において重要な役割を果たしており、情報が適時かつ正確に共有されることが求められます。

訪問看護でDXを推進する利点

訪問件数の増加

DXの導入により、スケジュール管理やルート最適化が可能になり、看護師の移動時間を削減できます。例えば、訪問経路を自動で計算するシステムや、患者の状況に応じた優先順位を設定するアルゴリズムを活用することで、無駄のない移動が実現します。これにより、1日に訪問できる件数を増やすことができ、より多くの利用者にサービスを提供することが可能となります。また、オンラインでの事前問診やリモートモニタリングの活用によって、軽度な状態の利用者には訪問の代替手段を提供することができるため、訪問が必要な利用者にリソースを集中させることもできます。

スタッフの業務負担低減

DXの推進で、訪問看護スタッフの業務負担も大幅に軽減できます。具体的には、電子カルテやクラウドベースの記録システムの導入により、従来の手書きや手動でのデータ入力の負担を減らすことが可能です。たとえば、訪問先でモバイル端末を使用してリアルタイムに記録を入力することで、事務所へ戻ってからの転記作業が不要となり、業務の効率化が図れます。移動時間や事務作業にかかる時間が削減されるため、看護師はそのまま直帰できるなど、多様な働き方を実現できます。

定期的な業務では自動リマインダー機能を活用することで、スケジュール管理の負担を軽減し、必要な情報を漏れなく共有することができます。DX化により、チーム全体でリアルタイムに情報を共有できるため、報告・連絡・相談の問題も解消され、ストレスの軽減が期待されます。

ケアの質向上

デジタル技術を活用することで、患者ごとのデータをリアルタイムで把握し、個別のニーズに応じたケアの提供が可能になります。たとえば、リモートモニタリングを利用して患者のバイタルサインを常時監視し、異常があれば即座に対応することができます。

また、AIを用いたデータ分析により、患者の状態変化の兆候を早期に発見できます。予防的なケアを実施することで、患者の悪化を防げます。さらに、スタッフ間での情報共有が円滑に行えるようになり、多職種連携が強化されることで、より包括的なケアが可能となります。これにより、利用者の満足度が向上し、訪問看護の質が高まることが期待されます。

訪問看護に予約システムを導入するメリット

患者データの一元管理と業務効率化

訪問看護に予約システムを導入することで、患者データの一元管理が実現し、業務効率が大幅に向上します。予約システムでは、患者の情報や予約履歴、訪問の状況を一括して管理することができるため、個別の書類や手作業でのデータ管理が不要になります。これにより、スタッフが必要な情報を迅速に確認でき、業務の流れがスムーズになります。

さらに、データの重複入力や手書きによるミスを防ぎ、正確な情報の提供が可能です。また、診療記録やケアプランなどの情報が自動的に連携されることで、記録作成の手間も軽減されます。結果として、スタッフの業務負担が軽減され、患者へのケアに専念する時間を増やすことができます。このように、予約システムを導入することで、訪問看護の業務全体が効率化され、質の高いサービス提供が実現します。

訪問スケジュールの透明性向上

予約システムの導入により、訪問スケジュールの透明性が向上します。システムを活用することで、患者やスタッフは訪問の予定をリアルタイムで確認でき、急な変更やキャンセルにも迅速に対応できます。これにより、訪問看護師と患者とのコミュニケーションがスムーズになり、予定の見通しが立ちやすくなります。

また、スタッフ同士でもスケジュールを共有しやすくなり、調整作業が容易になります。たとえば、担当者が変わる場合や緊急時の対応が必要なときでも、システム上でスケジュールを即座に確認・変更できるため、効率的な対応が可能です。加えて、訪問計画の見える化により、看護師の業務負担を軽減し、サービスの質を維持しつつ業務効率を高めることができます。

自動リマインダー機能で予約忘れを防止

自動リマインダー機能を備えた予約システムは、患者が訪問予約を忘れることを防止する効果的な手段です。予約の日時が近づくとシステムが自動で通知を送るため、患者への連絡漏れがなくなり、無断キャンセルのリスクが軽減されます。これにより、スケジュールの無駄を削減し、訪問看護師の業務の効率化が図れます。

また、リマインドの送信はメールやSMSなど、複数の方法で行うことが可能で、患者にとっても利便性が高まります。さらに、患者がリマインダーによりスケジュールを再確認することで、必要に応じて予定の調整やキャンセルの手続きを早めに行うことができ、看護師側も対応しやすくなります。

訪問看護におけるDXの成功事例

訪問看護ステーション ヘアカットプラス

愛知県春日井市にある訪問看護ステーション ヘアカットプラスは、特定室病に該当する在宅療養中の患者への訪問看護だけでなく、精神科訪問看護や訪問美容など幅広い訪問サービスを展開しています。マナーやモラルを大切にし、生活の場に合う丁寧な看護を提供しています。

予約サイトは、「カット」や「ヘアカラー」、「パーマ」のほか、寝た状態のままカットできる「ベッドカット」など複数のコースから選択可能です。予約ページでは、予約可能日時を一目で確認することができ、患者の予約利便性が向上しています。また、予約受付締切やキャンセル締切の日時が設定されています。予約システムがそれらの業務を自動で管理しているため、予約管理業務も削減されています。

また、当訪問介護は予約が承認制となっており、予約者が予約を入れてもすぐに予約が確定せず、いったん仮予約の状態になります。このように仮予約受付を設定すると、訪問看護側が予約者情報を一度確認したうえで予約を承認するかを決められます。

株式会社カナミックネットワーク

 

株式会社カナミックネットワークは、2024年7月に訪問介護・看護向けの「カナミックかんたんAI訪問ルート」をリリースしました。従来の訪問ルート作成は経験に依存し、多くの時間が必要でしたが、このサービスはカナミッククラウドの利用者情報やスケジュール、スタッフシフトと連動し、AIが最適なルートとタイムスケジュールを自動生成します。条件を設定して訪問計画を調整でき、業務効率と稼働率を大幅に向上させます。これにより、スタッフの負担軽減や無駄の削減が実現し、訪問計画作成の時間も不要となります。さらに、情報入力の手間を省き、コスト削減と事業所の売上アップに貢献します。

株式会社eWeLL

株式会社eWeLLは、介護保険・医療保険の両制度に対応した複雑な要件を満たす電子カルテ「訪問看護専用電子カルテ iBow」のサービスを展開しています。電子カルテのサービスは、訪問看護の管理業務全体をカバーするiBow製品サービスラインナップのひとつであり、書類作成や情報共有など日々の業務効率化に寄与しています。

特徴のひとつとして、生成AIによる訪問看護計画書の作成機能が挙げられます。在宅における疾患や計画書データが蓄積されているデータベースとiBow内に蓄積されたデータベースを掛け合わせ、生成AI(人工知能)により利用者にマッチする計画目標・問題点・解決策を自動で複数抽出し、提案します。

訪問看護で役立つRESERVAの機能

画像引用元:RESERVA.md公式サイト

訪問看護がDXを推進するにあたって、おすすめなのが予約システムの導入です。予約システムの機能は、来院や面会の予約管理にとどまらず、決済から患者情報管理、さらにスタッフやリソースの調整や集患に至るまで自動化する機能を持つシステムです。複数のツールやプラットフォームを切り替える手間は一切不要で、これにより、医療機関の業務プロセスがより効率的に進められるだけでなく、来院者にとってもわかりやすく使いやすい環境が提供されます。

現在多数の予約システムがありますが、医療機関が効率的にDXを促進するためには、実際に導入事例もあるRESERVAをおすすめします。RESERVAは、30万社が導入、700以上の医療機関も導入したという実績がある国内No.1予約システムです。予約受付をはじめ、機能は100種類を超えており、医療機関の業務プロセスがより効率的に進められます。初期費用は無料で、サポート窓口の充実やヘルプの利便性が高いため、予約システムの初導入となる病院、クリニックにもおすすめです。

以下では、訪問看護に役立つ4つのRESERVAの機能を紹介します。

オンラインカード決済

RESERVAのオンラインカード決済機能「レゼルバペイメント」で、患者は予約時に事前にクレジットカードで料金を支払うことができ、当日はスムーズにサービスを受けるだけとなります。運営側は会計業務の負担が大幅に軽減され、受付での混雑や支払いミスのリスクも減少します。さらに、売上情報は自動的にシステムに反映され、日々の売上分析や管理がかんたんに行えるため、運営面での効率化も実現します。

オンラインカード決済で事前の代金支払いにより、患者の無断キャンセルを防ぐ効果も期待できます。ほかにも、キャンセル受付締切をあらかじめ設定しておいたり、キャンセル料の設定を行ったりすることで、当日キャンセルによるトラブルを防ぐ方法もあります。

月額課金

月額課金では、契約した月額プランに基づいて毎月決まった金額が自動で引き落とされます。これにより、施設側と患者側のどちらも、毎回の支払い手続きを省けるため、手間が大幅に減ります。プランごとに利用できる回数や時間制限を設けることが可能で、たとえば「月4回までのコース」といった制限を設定できます。複数のメニューを1つのプランに組み込むことも可能です。

契約者は月額プランにより毎回の料金支払いが不要になるため、希望する日程で予約ができます。予約の際に料金は自動で反映され、「0円」と表示されます。

予約時アンケート機能

訪問看護において、予約時に患者がアンケートに回答することで、訪問前に個別の希望や注意点を事前に把握でき、よりきめ細かなサービス提供が可能になります。アンケート機能はラジオボタン、チェックボックス、数値入力、自由記述など、さまざまな形式から選べ、施設にニーズに合わせて柔軟にカスタマイズできます。

この機能を活用することで、従来は訪問時に確認していた健康状態や問診内容を予約時に事前収集でき、訪問当日の看護サービスがよりスムーズに行えます。患者が長時間待つことなく、迅速な対応が可能になる点も大きなメリットです。アンケートの回答は必須項目に設定することで、必要な情報を確実に収集でき、訪問看護の質をさらに向上させます。また、デジタルデータとして管理されるため、スタッフ間での情報共有もかんたんに行え、紙ベースの管理が不要になることで業務の効率化にもつながります。

 

準備時間設定

準備時間設定では、予約と予約の間に準備時間を設定することが可能です。訪問と訪問の間にインターバルを設けることで、次の訪問に向けた準備や片づけ、機材の消毒などを効率的に行う時間を確保できます。準備時間は施設タイプの場合1分単位、サービスタイプの場合は5分単位で細かく設定でき、ニーズに応じた柔軟な対応が可能です。

また、準備時間を設けることで、予想外の訪問時間の延長や次の訪問先への移動の遅れを防ぎ、スケジュールのズレを最小限に抑えられます。この機能により、患者へのケアが計画通りに進み、看護師が焦ることなく落ち着いて対応することが可能になります。

予約者データCSV出力

予約者データCSV出力は、患者情報の効率的な管理と活用に役立ちます。蓄積された予約データをCSV形式でかんたんに出力でき、Excelやスプレッドシートにインポートすることで、患者ごとの情報を一元管理しやすくなります。

また、ボタン1つでデータをダウンロードできるため、訪問前に必要な情報を迅速に取得し、患者の状態や訪問予定の整理が容易になります。出力されたデータは編集可能なため、訪問記録やケアプランの見直しに活用することができ、業務効率を大幅に向上させます。デジタル化された情報の活用により、スタッフ間の情報共有がスムーズになり、訪問看護サービスの質を高めることが可能です。

まとめ

本記事では、訪問看護におけるDXの推進による利点や、実際の成功事例、また予約システムRESERVAのおすすめ機能について解説しました。DXの導入により、患者データの一元管理が可能となり、訪問看護サービスの質向上や業務効率の改善を目指すことができます。

RESERVA.mdでは、今後も医療DXに関する知見や事例を取り上げていきます。

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