データ駆動の医療|ビッグデータがもたらす治療の革新

DX(デジタルトランスフォーメーション)は医療分野にも新たな変革をもたらし、医療DXとして概念が浸透しつつあります。この記事では、医療DXを推進する上で鍵となるビッグデータについて、活用の展望とともに解説します。そして、医療分野においてビッグデータがどのように活用されているのか、全国の医療機関、企業からの成功事例を紹介します。

医療DXとは

医療DXの定義と3本の柱

厚生労働省によると、医療DXとは、「保健・医療・介護の各段階(疾病の発症予防、受診、診察・治療・薬剤処方、診断書等の作成、診療報酬の請求、医療介護の連携によるケア、地域医療連携、研究開発など)において発生する情報やデータを、全体最適された基盤(クラウドなど)を通して、保健・医療や介護関係者の業務やシステム、データ保存の外部化・共通化・標準化を図り、国民自身の予防を促進し、より良質な医療やケアを受けられるように、社会や生活の形を変えること」と定義されています。

医療DXは、サービスの効率化や質の向上により、以下の5点の実現を目指しています。

  1. 国民の更なる健康増進
  2. 切れ目なくより質の高い医療等の効率的な提供
  3. 医療機関等の業務効率化
  4. システム人材等の有効活用
  5. 医療情報の二次利用の環境整備

これらの実現に向け、日本では「医療DXの推進に関する工程表」にもとづき、①全国医療情報プラットフォームの創設、②電子カルテ情報の標準化等、③診療報酬改定DXを3本の柱とし、取組を進めています。

参考:厚生労働省「医療DXについて」

ビッグデータとは何か

医療におけるビッグデータの特徴

ビッグデータとは膨大な量のデータを指し、その中でも特に量、多様性、速度の3つの観点が特徴的です。

医療分野におけるビッグデータには、患者の電子カルテ、検査結果、画像データ、遺伝子情報などが含まれます。これらのデータは従来の手法では処理が難しいほど大量で、さまざまな形式で蓄積されます。データの多様性という観点から見ると、電子カルテのような構造化されたデータから画像やメモといった非構造化データまで幅広く、病院や地域、国単位で管理されています。また、速度も重要であり、リアルタイムで生成されるデータを迅速に処理し分析することで、即時性のある意思決定が可能となります。このようなビッグデータを効率的に活用することで、従来の医療にはなかった革新をもたらす可能性が広がります。

ビッグデータの収集源

医療におけるビッグデータの主な収集源には、電子カルテや検査データ、医療機器からの情報などが挙げられます。電子カルテは患者の診療履歴や処方された薬の情報などを含み、継続的な医療データの蓄積に役立ちます。医療機器のデータからは心拍数や血圧、体温などのバイタルサインがリアルタイムで記録され、これが診断や治療に貢献します。さらに、遺伝子データの収集が進むことで、個人の遺伝的リスクにもとづいた個別化された医療が実現します。

最近では、スマートデバイスやウェアラブル端末も重要なデータソースとなっており、歩数や睡眠の質、心拍数などの患者自身が日常生活の中で収集したデータを医療機関と共有することで、より包括的な健康管理が可能になります。

ビッグデータがもたらす医療の変革

個別化医療の進展

ビッグデータを活用することで、従来の一律的な治療のみに頼るのではなく、個々の患者に最適化された診断と治療が可能になります。例えば、患者の遺伝子情報を解析し、薬の効果や副作用のリスクを予測することで、適切な薬剤を選択できるようになります。また、生活習慣や環境要因などのライフスタイルデータを分析することで、疾病のリスクを予測し、予防策を講じることができます。こうしたデータ駆動型のアプローチにより、より正確で効率的な医療が実現し、患者の健康維持と治療の効果が向上することが期待されます。

生活習慣病の予測や管理

生活習慣病の予測や管理において、ビッグデータの利用が進んでいます。例えば、患者の過去の診療記録や生活習慣データを分析することで、糖尿病や高血圧、心疾患などのリスクを早期に発見し、適切な予防措置を取ることが可能です。さらに、リアルタイムで収集されるデータを活用することで、個人の健康状態の変化を監視し、異常が発生する前に医師が介入できるようになります。こうした予防医療の進展は、医療費の削減にもつながり、患者にとってもより良い健康管理が実現します。

データ活用の課題と倫理的問題

プライバシー保護とデータセキュリティ

ビッグデータの活用が進むにつれて、個人情報の保護とデータセキュリティの確保が重要な課題となっています。医療データは非常にセンシティブな情報を含むため、これらのデータが悪意のある第三者に渡るリスクや、誤用されるリスクが懸念されています。

これに対処するためには、データの暗号化やアクセス権限の厳格な管理など、サイバーセキュリティ対策が不可欠です。また、法的な保護措置も強化されつつあり、各国で厳格なプライバシー規制が適用されています。医療機関や関連企業は、これらの規制を遵守しながら、安心してデータを活用できる環境を構築する必要があります。

データ利用にともなう倫理的問題

ビッグデータの活用には、プライバシーやセキュリティに加えて、倫理的な課題も多く存在します。例えば、データの不平等な利用が懸念される状況では、特定の集団や地域がデータ分析から排除されるリスクがあります。これは医療格差の拡大を引き起こす可能性があり、社会全体としての医療の公平性が問われる場面も出てくるでしょう。

また、アルゴリズムにバイアスがかかることで、特定の人種や性別に対して不利益をもたらす診断や治療が行われるリスクもあります。そのため、ビッグデータを用いた医療においては、公平性や透明性を確保し、社会的な責任を果たすことが必要不可欠です。さらに、データ提供者の同意やデータの匿名化など、データ利用における倫理的な配慮が求められます。

ビッグデータの未来展望

AIとビッグデータの融合

ビッグデータのさらなる活用にはAIとの融合が欠かせません。AIは膨大な量のデータを短時間で解析し、パターンや異常を見つけ出すことができます。これにより、診断や治療の質が向上し、医療現場での効率化が実現されます。例えば、AIを利用して患者の診療記録や遺伝子データ、生活習慣データを解析することで、より精度の高い診断や治療計画が立てられるようになります。また、AIが自動でデータを処理し、リアルタイムで医師にフィードバックを提供することで、医師の負担が軽減され、患者への対応が迅速化します。このように、AIとビッグデータの組み合わせは、今後の医療において革新的な変化をもたらすことが期待されており、治療の個別化や予防医療の分野で特に大きな役割を果たすでしょう。

パンデミック予測や新たな治療法の開発

ビッグデータは国際的な医療にも大きな影響を与えています。例えば、新型コロナウイルスのパンデミック時には、ビッグデータを活用して感染拡大の予測や、効果的な予防策の策定が行われました。また、国際的なデータ共有によって、新薬や治療法の開発も加速しています。特定の疾患に関するデータを多国間で共有することで、より広範なデータ解析が可能となり、病気の原因究明や新しい治療法の発見につながります。さらに、AIとビッグデータを組み合わせることで、グローバル規模での医療革新が期待されており、今後も国境を越えたデータ連携が重要な役割を果たすと考えられます。

医療業界におけるビッグデータの活用事例

近年、医療機関がビッグデータの分析や研究を行っています。これにより、疾患と遺伝子の関連性の解明や医療技術の発展、新薬開発などさまざまな面から医療ビッグデータ有効性が示されることが期待されます。ここでは、医療分野でのビッグデータの活用事例を紹介します。

産学連携・クロスイノベーションイニシアティブ

大阪大学大学院医学系研究科、医学部附属病院では、2015年12月に「産学連携・クロスイノベーションイニシアティブ」を立ち上げ、「大阪大学 健康・医療クロスイノベーション会議」の開催のほか、多様な分野の先進的な企業・機関との包括的な連携を推進しています。大阪大学の同研究にさまざまな企業が参画し、それぞれが所有している医療ビッグデータを活用した健康増進や健康寿命延伸の研究に取り組んでいます。

また、企業間の垣根を超えた業種横断型の新しいイノベーションの実現に向けて、「大阪大学 健康・医療クロスイノベーションフォーラム」を開催しています。組織・分野を越えたクロスイノベーションの実現、研究成果の国際的な事業化の加速等を通じて、健康・医療の革新を目指します。

産総研・早大生体システムビッグデータ解析オープンイノベーションラボラトリ

産業技術総合研究所(産総研)と早稲田大学は、新たな産総研の拠点CBBD-OILを早稲田大学西早稲田キャンパスに設置し、早稲田大学が有する日本有数の生体システムビッグデータと、産総研・早稲田大学双方の情報解析シーズやデータ解析技術を合わせて生命現象のメカニズムの理解を目指します。細胞や生物をシステムとして理解することで、疾病メカニズムの解明や微生物による医薬品原料の探索・生産、究極の個別化医療への貢献を目指した研究開発を行います。

さらに、産学官ネットワークの構築により、民間企業の参画による橋渡しにつながる目的基礎研究の強化や、世界標準となる最先端の生命情報解析技術の研究開発を行います。

予約システムRESERVAが、医療DXの一歩に貢献

画像引用元:RESERVA.md公式サイト

患者情報や医療機関に必要なデータをオンライン上で適切に管理するのにおすすめなのが予約システムの導入です。予約システムの機能は、来院や面会の予約管理にとどまらず、患者情報の管理、問診、スタッフやリソースの調整に至るまで自動化する機能を持つシステムです。複数のツールやプラットフォームを切り替える手間は一切不要で、これにより、医療機関の業務プロセスがより効率的に進められるだけでなく、来院者にとってもわかりやすく使いやすい環境が提供されます。

現在多数の予約システムがありますが、 医療機関が安全にDXを促進するためには、十分なセキュリティ対策が施されているRESERVAをおすすめします。RESERVAは、28万社が導入、700以上の医療機関も導入したという実績がある国内No.1予約システムです。予約受付をはじめ、機能は100種類を超えており、医療機関の業務プロセスがより効率的に進められます。初期費用は無料で、サポート窓口の充実やヘルプの利便性が高いため、予約システムの初導入となる病院、クリニックにもおすすめです。

さらにRESERVAは、ISMS認証(ISO 27001)、ISMSクラウドセキュリティ認証(ISO 27017)を取得しており、不正アクセス対策やデータの保護・暗号化の実施もされているため、安全にデータを管理することができます。

RESERVAのセキュリティ対策についてはこちら

まとめ

本記事では、ビッグデータ活用の展望と、医療分野におけるビッグデータの活用事例を紹介しました。膨大かつ多様な情報としてビッグデータを適切に取り扱い、医療研究機関で活用することは、現場での個別化医療や新薬の開発に貢献します。医療のDX化を検討している医療機関の関係者は、ぜひ本記事を参考にしてください。

RESERVA.mdでは、今後も医療DXに関する知見や事例を取り上げていきます。

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